第7話

2/8
2378人が本棚に入れています
本棚に追加
/176ページ
「川原部長の奥さんって専業主婦ですよね? いいなあ 」 会議が煮詰まり「一旦休憩にするか」そう言った川原部長に、全員が脱力した時の事だった。雑談が空気を変えてくれるかもしれない。そんな雰囲気だった、にも関わらず、つい…… 「えっ?」 と、声を出してしまった。川原部長の奥さんが専業主婦だってこと、ではなく、小篠さんの『いいなあ』ってところに。 「いや、全くの専業主婦ってわけでもないんだけど……。趣味の延長で自宅で講師やってるよ」 私の『えっ』という驚きは、川原部長の奥さんが専業主婦という部分ではなかったのだが、そう取られたのか川原部長が少し気まずそうにそう言った。お金がかかる年齢のお子さんが二人いて、川原部長の収入だけで何とかなる、ということ。つまり、そのくらいの手取りがあるという事だと言ったようなもの。でも、この会社の役職者ならそうなのだろう。小篠さんの『いいなあ』が、川原部長の収入面に対して、だったならそんなに引っ掛かりはなかっただろう。 むしろ、夢があっていいなあと思う。いまから川原部長のポジションまで頑張れば自分にもそんな可能性があるのだから。 「もう、全くの理想そのまま! いいなあ」 小篠さんがもう一度そう言った。小篠さんの理想とは、私の予想が正しければ、恐らく……。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!