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「いいと思いません? 専業主婦! そして趣味の延長で、好きな事をして、生活の為じゃないお金を稼ぐ。ああ、ほんと、羨ましい。奥さん、何のお教室されてるんですか?」
「料理だよ。どっかで習ったのにハマって、お免状貰って……とか言ってた」
「マジすか、料理のうまい奥さん、理想。毎日旨いもの食えるのいいなあ」
香田さんまでもそう言って
「いや、毎日とはいかないけど、まあ、よくやってくれてるよ」
多少の謙遜はしつつも、川原部長もまんざらでもなさそうにそう言う。無難に答えただけかもしれない。この場で夫婦の不満など洩らさないだろうし、うーん、やっぱり幸せそう、かな。川原部長。つい、探るような目をしてしまった。川原部長の奥さんも幸せなのかなって。
否定したいわけじゃない、ただ、私はそうは思わないから、やり過ごすつもりだった。
「片瀬さんも、そう思いますよね?」
当然のように、小篠さんにそう言われたことに
「うーん、そう、だね」
と、返事をしてしまった。『うーん』から始まる返しはだいたい納得していない。SNSのコメントだって、『うーん』で始まるコメントはまず、否定的だ。
「あれ、違うの?」
意外そうに安藤さんが私の顔を覗きこむ。
もれなくその場の全員が私が返事をするのを待ってる。視界の端には、唯一私の信念をご存知である後藤さんの、いつもの口角を少しだけ上げただけの顔が目に入った。
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