泣き虫に降り注ぐ雨

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「また泣き真似してるー!」 そんな陰口にも慣れっこになるくらい、 私はしょっちゅう泣いてしまうタイプだった。 映画や小説に感情移入したりすることも多かったし、 だいたい悲しいことがあったら泣くのは当たり前で、 自然なこと。 だけど、オトナになるとどうしてみんな泣かなく なるんだろう? そんな風に思ってた私が、悲しいはずなのになぜか 涙が出なかったことがある。 それは、大好きだった彼を交通事故で急に亡くしてしまった 時のこと。 報せを受けただけでは、どうしても信じられなくて (というより、信じたくなかったのかもしれない)、 すぐ現場に駆け付けた。 変わり果てた彼の車と生々しい血痕が事態の重さを 物語ってた。 どしゃ降りの雨の中、傘もささず呆然と立ち尽くすだけの私。 その目は乾いていた。 かわりに、降りしきる雨が、頭のてっぺんからつま先まで、 まるで洗い流すかのように、ずぶ濡れにしていったんだ。 それ以来、私は泣き方を忘れてしまった。
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