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2章第2話~スポーツができるってこんなに気持ちいい!~
初等学校は基本的な勉学や集団生活や行動を学ぶ場で、それぞれ将来を見据えた教育が行われるのは中等教育の場かららしい。
家で学んだことは騎士や指揮官としての専門的な事が多く、学校で学ぶ基礎的な勉学は初めてのものが多かった。とはいえまだ子どもに学ばせるものなので、特に苦労するところは無かった。
その中でも運動の時間は特に楽しかった。家でもトレーニング目的で走ったりはしており、使用人や先生からも褒められはしていた。
しかし同世代の子どもと比べたことはなく実際のところ自分はどの程度の実力か全く分かっていなかった。
しかし授業で同い年の子らと走ってみると自分が圧倒的に速いのが分かった。自分を除いてクラスで1番足の速いヨーゼフと走ってみてもそれでもグングン引き離してしまう。
「速ええ!俺より速え奴初めて見た!」
「フッフッフ。どうだ。」
走り終わった時、ヨーゼフが声を掛けてきた。
俺はニヤリと笑って見せると彼は「今度は絶対負けねー!」と言っていた。
しかしこんなに速いとは思っていなかった。東亜の頃も足はそこそこ速い方だったが、こんなに圧倒的に走れてはいなかった。
他にも投擲をしてみても、跳躍をしてみても、泳いでみても1番。
運動は全くできなかったわけでもないが、トップ中のトップになったことは一度も無い。
しかしこの世界に来てみれば神の力で身体能力を上げられトップ。正直気持ちよかった。
自分に向けられる羨望の眼差し、ちょっと突っかかって来ていた子すらぐうの音も出ず嫉妬と羨望が混じった眼差しを向ける姿。
東亜だった頃は無縁で、恐らく死ぬまで無縁だろうと思っていたものが今手に入っている。気持ち良くない訳が無かった。
「すごいね。何やっても1番だ。」
「ああ、将来は騎士になるつもりだから、毎日鍛えてるんだ。」
「僕もそのつもりなんだけどね。僕は王族の近衛騎士になりたいんだ。」
ルークに感嘆しきりといった表情で声を掛けられた。俺は笑顔を返して、自分の将来の為鍛えているのだと返答した。
だがルークも騎士になりたいらしい。それも王族の近衛騎士、どれほどのものかしっかりとは分からないが、王族の側仕えになるのだから門戸は狭いものだろう。
「そっか。俺は将軍だなあ。お互い頑張ろうぜ!」
「もちろん!」
自分は司令官を目指していると答えて、お互い夢に向かってがんばろうと答えるとルークも笑顔を返してきた為、俺は拳を前に突き出した。
だがグータッチが分からないらしく、ルークは少し困惑しているようだ。つい東亜だった頃の癖が出てしまった。
「拳を合わせて健闘を祈ったり称えたりする儀式だよ。ルークもほら。」
「あ、ああ!」
もうやってしまったものは仕方がないので、ごり押しでそういうもんなんだと言って押し切ってしまう。
ルークは困惑しながらもグータッチを返してきた。
グータッチなんていつ以来だろうと思い出せないくらいだったが、その久しぶりのグータッチはうれしいものだった。
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