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リーフの森に着き、俺と父も馬車を降りた。俺の今回の装備は動きやすさを重視した軽装だが服には鎖帷子を仕込んだもの、短めの両刃剣と木でできた基を鉄で覆った盾だ。
身長は150センメラーほどにまでなったもののまだ10歳にもなっていない為、なるべく重量を抑えた剣と盾を特注してくれていた。
早速森に入ることにしたが俺たちは隊列を組んで動くことになった。
父を隊長として前方に立ち、残りの隊員は左右に分かれてアルファベットのVの上下逆になるように隊列を組む。
この隊形での機動は前方と側面への対応が容易にできるようで、ロートリース家で捜索する際は基本的にこの隊形を組んで動くようだ。
俺は左方の3番目に入った。そして父の号令に俺たちは応えて森に入って行った。
この森は王都に向かう為には必ず通る必要があるので、人や馬車が通りやすいように通り道はしっかりと拓かれていた。
俺はフォローされやすい位置に入れられてはいるが、森の様子を五感で探る。何かが動けば必ずその痕跡が残る。それを逃さずに捉えて対応すれば不意を打たれたとしても対応できる。
道中は特に何も出ず、少し開けた場所に出た。しかしこの開けた場所も油断はできない。
この場所は休憩の為に開かれた場所ではあるが、魔物が出ないわけではない。
「出たぞ!横隊形に変われ!」
前方に立つ父が声を上げる。そして隊形の変更の指示が飛んだ。横一列に並ぶ隊形は正面の敵に攻撃しやすい隊形だ。今は開けた場所に出ているため、横隊形になり攻撃に出る事にしたようだ。
相手はラグヮジャ。四足歩行で素早く飛び跳ねることが得意な30~50センメラーくらいの大きさの獣系の魔物。
素早い動きからの体当たりは大の男でも吹き飛ばすほどと聞く。
ラグヮジャは群れで行動する魔物で、今回は5体の群れだった。
俺は武器と盾を構えながらすぐに動けるようにつま先に重心をかけながら小刻みに動く。そして時折地面を踏み鳴らしてみる。
ここは草が生えた地面で少し前に雨が降ったのか地面が緩くなっている。
条件としてはラグヮジャも同じだが、俺は初めての実戦。動きで勝てるという確信は持てていない。
そんな時に1体のラグヮジャが隊列の右の騎士に攻撃を仕掛けてきた。
騎士は前に出る。そしてすんでのところで跳躍からの体当たりを横に躱し、着地したところを縦振りで一閃し一刀両断にした。
その様子を見てやはりあの動きにはまだついて行けないであろうと確信し、それならばと魔術を使うことを考えた。
隊列で隣になった父が視線はラグヮジャから目を離さないままに話しかけてきた。
「さて、ファンデンお前はどうする?」
「魔術を使おうかと思います。」
「よし。」
父は俺の次の行動を問うてきた。俺は短めに魔術を使うと答えると、父は肯定なのか了承なのか分からぬ返答をして少し前に出る。
そして後ろ手で掌を見せる。これは魔術を使うので気をつけろという合図だった。味方への誤爆を防ぐための合図だ。
とりあえずここで魔術を使うことについては反対ではないようだ。
「ラ・アローヴ!」
俺の選択した魔術は火の魔術、ラ・アローヴ。獣系の魔物は火に弱いことが多く、このラグヮジャもその例に漏れない。
森の中であるため普段は特に気をつけなければならないが、今回は雨が降ったすぐ後で地面も草木も湿っていて、火が燃え移る可能性は少ないと判断して火を放った。
そしてラグヮジャの動きは単調で、着地したときは特に無防備になる為、タイミングを見計らって放つ。
炸裂した火はラグヮジャを焼く。弱点を突かれたためか凄まじい断末魔の叫びを上げながらラグヮジャは丸焦げになって動かなくなった。
この様子を見た他のラグヮジャに明らかに動揺が走っている。そしてそれを父や歴戦の騎士は見逃さない。
「掛かれーッ!」
動揺が走り動きが止まったラグヮジャに父の号令と共に攻撃を仕掛ける。元々俺の鍛錬の為に来たリーフの森だ。
父を筆頭とした歴戦の騎士たちが低級の魔物に後れを取るはずもなく一瞬でカタがついてしまった。
ともかく俺は初めてパーティーを組んでのバトルで見事勝利を挙げた!
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