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俺は爺に向かって喚きながら詰め寄ろうとしたが、いつまで経っても爺の元にはたどり着けず、結局こちらが先に参ってしまい座り込んでしまった。
喚いている間も神は何も言わず黙っているのみでどうやら俺が落ち着くまで待っていたようだ。
「落ち着いたかの?すまぬのう。死神の奴がお主の隣におった者と間違えてお主を連れてきてしもうたんじゃ。」
俺は何も答えず神の言葉に耳を傾ける。神の言うところによれば、死神のヘマで間違って連れてこられてしまったらしい。
俺は神の言葉で朧気ながら自分が最期何をしていたのか思い出してきた。
俺は今日残業を終えて、明日も早いのでカプセルホテルに宿泊していた。
死んだときの事は思い出せないので恐らくは寝てた時に連れてこられたのだと思う。
俺は最期は寝てる内に死にたいとは思ってはいたが、そんな叶え方はさすがに御免被りたかった。
「……で、生き返れるのかよ?俺。」
「無理じゃな。」
恐らくそうだろうなと思ってはいたがやはり俺が生き返ることは無理らしい。
もう怒る気力も無くなり、出る言葉はだろうなというもののみ。
まさかこんな形で死んで、しかもそれを神から伝えられてしまうとは思いもよらなかった。
ある意味レアな体験だなどとそんなことを思う余裕などなかった。
「ワシも申し訳ないと思っておる。じゃから罪滅ぼしにお主を別の世界に転生させよう。」
「ハッ異世界転生?漫画かよ。チートでもくれんのか?」
「望むならくれてやっても良い。地井東亜としての記憶もつけてやろう。」
神は俺に別の世界への転生という形で償いをすると言ってきた。
そんなやつ流行ってるなと神の言葉を聞いて思い出して、自分にすごい力でも与えた上で転生させてくれるのかと皮肉交じりで尋ねてみた。
更には俺の今の記憶までつけて送ってくれるのだという。
まあたしかに俺の記憶を無くしてしまえば最早それは俺ではなく別の存在になるのだから当たり前なのかもしれないが。
「どうする?行くか行かぬか?」
「今の世界じゃダメなのか?」
「そこまではサービスはできぬのう。」
「そうか。分かった。頼む。」
どうせなら今の世界でチートできた方が良いと思い、今の世界は無理なのかと聞いてみたが、そこまでサービスはできないと神に突っぱねられてしまった。
どんな世界なのか分からないが、すごい力を与えられるその世界での活躍を夢想して内心ワクワクしながら神による異世界転生を受け入れた。
神が最後に何か言った気がしたが、その瞬間俺の視界は完全に真っ暗になってしまった。
「さて、今回の者はどのように生きて行くかのう……。」
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