1章第2話~貴族ってこんな事するんですか?~

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「ファンデン様参りましたか。では早速始めましょうぞ。」 俺の魔術の先生であるモリーン。60歳を超える老体だが魔術の腕は国内屈指だったらしい。 しかし俺は他の人間の魔術をあまり見る機会が無いのでなんとも言えない。だが多分本当の事なのだろうとは思う。 「ラ・アローヴ」 火の魔術に必要な呪文の詠唱を行う。すると前に突き出した掌から火の玉が飛び出す。 この世界の魔術は長々とした呪文の詠唱は必要ないようなのだが、短い言葉の分その中に様々な情報を含んでいる。 魔術とは例えば火なら火を司る精霊に力を借りて行うもので基本的に精霊との言語が違うらしい。 しっかりと言わないと何も起こらなかったり、思った効果とは違うものが飛び出したりしてしまうようだ。 無詠唱で魔術を行えた人間も居たらしいが、モリーンに言わせればそんなものは精霊そのものみたいなものらしい。 「ふむ、よいですな。しかし繰り返し、繰り返しが大事ですぞ。」 今は庭で訓練という形で詠唱を行っているため、それなりに修練を積めばよほど素質が無いものでもなければ問題なく魔術を扱えるそうだ。 しかし例えば疲労困憊の時、水中に居る時など、自身の体調や周囲の環境によってはうまく呪文が唱えられない状況がある。 そんな時でも通常時と同じように魔術を使えるよう、繰り返しの修練が大事だとモリーンには説かれている。 繰り返しの努力、俺が1番苦手な事だ。そんな俺が少しげんなりした顔を見せるとモリーンは 「ファンデン様は素質がありますぞ。ワシはファンデン様くらいのお年の頃には魔術の1つもできませなんだ。」 こう言って少しおだててくる。おだてられると悪い気はしないのだがあまり長続きはしない。 モリーンもそれを知ってか知らずかこうして定期的におだててくる。本当のところの実力は分からないが、先生としては間違いなく俺に合ってると思う。 魔術の修練が終われば次は剣の訓練に入る。
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