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今日は式典だけで、あとは先生の話を聞いて帰るだけのようだ。
教室に着き、皆が自分に割り振られた席に座れば、学校での生活や注意事項の話をこのクラスの担任となった女性の先生が説明してくれた。
そして下校の時間、俺はさっき話したセリオスと教室を出た。
セリオスは教室に帰る僅かな時間で既に数人のクラスメイトと話していたようで、俺とセリオスを含めて6人の男子で廊下を歩く。
セリオスなどの社交的な人物は素直に凄いなと感じる。俺はあの神に身体の成長や素質といったものを強化してもらった。
実際その感覚もあるが、性格の部分はあまり変わっておらず、やはり対人関係には苦手意識があった。
他の男子もやはり俺の身長が大きいという話をしてきた。
それに対して何故かセリオスが「ファンデンは130センメラーあるって。」とドヤ顔しながら言い、顔のそばかすが特徴的な男子、フリオ・ランドが「何でお前が威張ってんだ。」とツッコミを入れる、その一連の流れで全員が笑う。俺も一緒になって笑った。
そのまま廊下を抜けて中庭に出る。この中庭は噴水を中心とし、左右対称の作りとなっている緑と水と白い石造りが非常に綺麗なコントラストとなっている庭だ。
そんな庭の木を見上げる女子が居た。
「何だアレ?」
「知らん。」
「木に帽子が引っかかってるな。あれを取りたいんじゃないかな?」
セリオスとフリオがあの女子は何をしてるんだろうと気にした素振りを見せる。
俺は彼女の視線の先を見てみると、木の枝に帽子が引っかかっていた。どうやら風か何かが吹いて帽子が飛んで行ってしまったようだ。
「どうしたんだい、君。」
「私の帽子が木に引っかかっちゃったの。」
金髪の碧眼で貴公子然とした少年、ルーク・アバーテが女子に声を掛けた。
さっきまで俺たちと騒いでいたとは思えないくらい物腰柔らかに優しく声を掛けている。どうやら彼は特に女の子に優しい奴のようだ。
一方女子の方は目に涙を溜めて、今にも泣きだしてしまいそうな表情で木の枝に帽子が引っかかったと説明する。
「よし!俺が取ってやるよ!」
快活そうな少年、ヨーゼフ・アクスンがどっから出したか分からないが、木の棒を持って飛び跳ねる。
しかし俺はともかくとして他の5人と比べても1番小さく100センメラーくらいのヨーゼフが飛び跳ねてみても全く届いていなかった。
何と反応していいか分からない微妙な空間の中で女子を含めた6人で彼を見るしかなかった。
「と、届かねえ!お!ファンデン、肩車してくれよ!」
「お、おう。」
どう頑張ってみても届かないことに気づいたヨーゼフは俺に肩車されることを思いつく。
それよりも自分が木の枝を持ってジャンプした方が早いような気がするが、彼の希望に応えてしゃがんでヨーゼフが肩に乗れるようにしてやる。
ヨーゼフは俺の肩に乗り、俺は立ち上がる。
ルークは棒を持った腕を伸ばして帽子の被る部分に棒を引っ掛けて、引っかかった枝から帽子を外す。だが引っ掛けていた棒から帽子がこぼれ落ちてしまう。
しかし俺たちを見ていた内の1人、ダニー・コラレスがそれを受け止めて事なきを得た。
「はい。」
「ありがとう。」
ダニーがそのまま女子に帽子を渡す。
女子は目に涙を溜めながら俺たちに感謝の言葉を言う。
いい所を持っていかれたヨーゼフは少し微妙そうな顔をしていたが。
彼女の名前はアメリア・ブランシエール。肩まで伸びたブロンドが綺麗で灰色の目をした少女だ。
俺たちは学校の門まで話しながら歩いて行く。そしてそれぞれの両親の元へと行った。
30数年ぶりの小学校となった今日だが、とりあえず友達もできて良かった。
父と母にも友達ができたと言うと喜んでくれた。俺は両親と馬車に乗り、家に帰って行った。
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