同居 ① カノンの条件

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 どうやって先輩を説得しよう、とリュンクスは途方に暮れた。  ノクトの逆鱗は、自由を奪われることだ。カノンに譲るのも限度がある。いかに物分かりのいい先輩でも、カノンが家主になれば色々やりにくいと嫌がるだろう。   「とっておきを使うか……?」    海岸で賭けを持ち掛けられた、何でも一つ願いを聞いてあげるというノクトの約束を、まだ使っていない。  しかし、この切り札は最後まで取っておいた方が良い気がする。   「うーん」    最近、カノンの様子が変だ。  間違い探しのように注意深く見なければ、分からない程度のおかしさである。  リュンクスが気になっているのは、日課となっている入浴で、性的な悪戯を仕掛けられない事だった。  二日に一度は、二人そろって河原で風呂に入る。  カノンは異常がないことを確認するように、手ずからリュンクスの体を洗う。そして念入りに魔力を交換する。  もちろん、忙しい時もあり、毎回、性交に突入する訳ではない。  しかし天空城から帰ってきてから、カノンは事務的に体を洗うのみで、それ以上踏み込まなかった。  やはり、無断でノクトとパートナー登録の約束をしたことを、怒っているのだろうか。   「カノン……」    その日、リュンクスは我慢できずに、自分からキスをした。  カノンの唇を舐め、行為に誘う。   「煽るな。抑制が効かなくなる……っ」    リュンクスの挑発を受けたカノンは、黄金の瞳を細め、苦しげに眉をひそめる。  他のどんな魔術師も持っていない(たぐい)まれな金色の瞳に、縦に長い瞳孔が見えた。竜の瞳だ。触れた体は異様に熱かった。   「カノン?」    カノンは熱い息をこぼしながら、リュンクスを引き剥がした。      
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