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「俺は、卒業後にアウレルムに店を出して、魔力補給薬を売り出したいんだ」
「そうか。そうしたいだろうなと、薄々感じていた。それで……?」
カノンは平然と続きを促した。
ここまでは当然だが、許容範囲内。
「それで、店を出すなら資金が要るだろ。塔に……借金しようと。保証人に、先輩を立てて」
ここで話の成り行きを察したカノンは、眉を逆立てた。
「あの一晩中、計算していた夜が伏線だったんだな……!」
天空城で三人旅をしていた時、湖畔の宿で泊まった最初の日。リュンクスはノクトと同じ部屋だった。カノンは二人が抱き合っていると思っていたのだが、実は違っていて、リュンクスは一晩、借金返済の計画を練っていたのだ。
カノンは「おのれ」と悔しそうに呻いた。
轟々と燃える怒りの炎が背景に見えるようだった。
「保証人だけじゃないだろう! そのくらいで、あの人が上機嫌になるはずがない!」
「そのぅ、保証人は塔所属の魔術師しかなれなくて、暗黙の了解で借金した魔術師は塔所属になって、サーヴァントなら保証人とパートナー登録することになる、らしい」
借金返済できなければ、塔で永遠に働かされるということだ。多額の資金を低利子で貸し出す代わりに、身内で監視させるという仕組みだった。
「パートナー登録」
「……」
それは仕事上、公式にノクトの相棒になるということで。
魔術師の間ではある種の結婚代わりにもなる制度である。
「アウレルムにも似た制度があるから、塔の制度は無視していたが、こんな弊害が……」
カノンは「外堀は埋めたつもりだったのに、俺としたことが抜け道を見逃した」と舌打ちしている。
いや、外堀埋めんなよ、とリュンクスは冷や汗をかく。
策士はノクトだと思っていたが、カノンも大概腹黒く考えを巡らせるタイプだ。
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