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第1話……丘の上に
丘の上に(1)
「終わった───────!」
ダンボールを潰して括り、ガレージの隅に置いたら本日の引っ越し完了。
夏休みも終わり、9月のシルバーウィーク。
今日。
俺たち北條家は無事、丘の上に引っ越した。
まだ更地だったここへ連れて来てもらってから、そろそろ二年の月日が流れようとしている。
幾度か修正を重ねつつ、俺達が住みたい家が形になるさまは、なんとも楽しかった。
母屋は住居スペース・ガレージ・オフィスが一体化したお洒落な建物。
離れはログハウス風になっていて、なんとも可愛らしい。
母屋に併設されたガレージには、悠斗くん用と俺用のミニバンがピカピカの新車で二台、引っ越しと同じく本日納車された。
運転免許を取得してすぐ、小回りのきく軽自動車に乗っていたんだけど、俺の方が子供四人を乗せて行かなくちゃいけない場合もあるし、慣れてくればミニバンも運転しやすいからと、思い切ってお揃いで新車を購入してくれた。
長男・龍はもうすぐ八歳、小学二年生。
次男・薫は四歳、年中さん。
三男・輝は三歳、年少さん。
四男・亘も三歳、年少さん。
やんちゃ盛りの男どもは、引っ越しと同時に裏の林に秘密基地を作り、泥んこになって帰ってきた。
もう秋とはいえ、まだ昼間の外は暑い。
俺は引っ越し作業でぐったりというのに、チビ達はなんでこんなに元気なんだろう。
「優一さん、お疲れ様でした」
「悠斗くんもおつかれ。ここ座って。お?うう……ん、んぅ、ん」
軽く話しながらキスしてくる。
子供達はもう俺達がイチャイチャしても全然気にしない。
チラッと龍が見たけど。
「お風呂入るよ」
龍が声をかけてきた。
「うん、使い方分かる?」
「大丈夫」
裏の林から帰ってくる前に、湯はりのスイッチをつけたから、もうお湯が溜まってるのだろう。
既に風呂場からキャッキャッと双子の甲高い笑い声が聞こえる。
デリバリーが到着した。
寿司屋に蕎麦屋にピザ屋。
特上寿司、引っ越しには蕎麦でしょうと、ざるそば。
子供達からはピザピザピザピザ!とエンドレスでやかましいくらいに連呼された。
滅多にデリバリーを頼まない我が家だけど、おじいちゃんち《和哉さんと悠里さんち》では、孫にせびられてデリバリーを頼むようだ。
寿司だけデリバリーにして、あとはなんか作るよと言ったんだけど、却下された。
今日は俺が作らなくていいと。
悠斗くんも相変わらず俺を甘やかす。
「じゃあさ、もう仕事終わってるんでしょ?田代くんちも呼ぼうよ」
「いいですね」
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