涙の南十字星を追って

2/7
前へ
/7ページ
次へ
 そんなエイドリアンと、篤史は一度だけ会話をしたことがある。10年前の12月の半ばの忘年会のこと。  たまたま同じテーブルにいたエイドリアンが篤史に言った。  「日本人、北斗七星好き。私たち、日本人と違って南十字星好き。愛していますね」  篤史は、嬉しそうに話す彼を見て答えた。  「僕は南十字星を見たことがないんです。ぜひ一度見てみたいものです」  たったそれだけの他愛無い会話だった。  その日の帰り道のこと。歓楽街から駅に向かう途中、篤史は近道をして裏路地を通った。同じ方向に帰るのは篤史の他に2人。恒川という同僚とエイドリアンだった。 .
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

240人が本棚に入れています
本棚に追加