パニック編 ~イケメン腐男子、爆誕~ (1)

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 あの四人は、香坂「春」・「夏」木大成・西「秋」佑次郎・長「冬」真と、全員の名前に四季が入っている。 つまり、春夏秋冬で一年(ひととせ)王子ってわけ。  この学園でひととせ王子のことを知らない人間はきっといない。彼らについての噂は、生物室で飼われているバッタだって耳にタコができるほど聞いていると思う(バッタに耳があるのかどうかは知らないけれど)。  学園の噂話にとんとうとい女子高生界のバッタであるあたしだって、もちろんそう。知っているからこそ七時に登校するのだけは避けていたのだ。 今日はちょっとぼーっとしていたけれど……。  確かにひととせ王子は目の保養になる。しかしいくら麗しいボーイズだってそこにラブがない以上、派閥に入って並んでまで見ようとは思わない。それにあのクソ兄貴の顔は一秒だって見たくない。  それよりも重要なのは、ラブだ。  ボーイズのラブだ。  女子たちがひととせ王子の余韻に浸っている中、あたしはしおりがわりに指をはさんでおいた漫画を開いた。  古代ローマを舞台にした大人気BL漫画「恋して月桂冠」の最新七巻、たった今このページで、ルキウスが思いを寄せているマルクスを抱き寄せたところだ。  ルキウスはぶっきらぼうな性格で、ずっと片思いしている議論仲間のマルクスにいつも意地悪なことばかり言っている。その彼が、顔を真っ赤にしてマルクスに思いの丈を打ち明けたのだ。
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