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パニック編 ~イケメン腐男子、爆誕~ (1)
世の中はいつだって矛盾している。その最たるものがあたしと兄貴の関係だろう。
あたしはひとりっこだけれど兄貴がおり、兄貴もひとりっこだが妹がいる。
でもこれだけじゃきっと誰もわからないと思うから、噛み砕いてもう一度説明させてほしい。
あたしには兄貴がいる。裏を返せば兄貴にはあたしという妹がいる。しかし、あたしたちはどちらも、ひとりっこだと公言している。
理由は説明するまでもない。ていうか説明したくない。あたしたちはお互いの存在をまわりに知られたくないと思っているのだ。
「邪魔ですわよ」
その一言とともに背中を軽く突き飛ばされて我に返った。両手に握りしめていた漫画が地面に落ちる。
慌てて漫画を拾い、何度かはたいて土埃を落とす。
振り返るとそこには圧巻の光景が広がっていて、あたしはギャグ漫画みたいにずりおちてくるメガネを両手で無理やり押し上げた。
両手両足の指をフルに使っても数え切れないほどの女の子たちが、二列に並んで真ん中に道を作っている。
その列の一角、あたしがぼけーっと突っ立っていたあたりで、茶髪の巻き髪やらばっちりメイクのギャルやら清楚系やらとにかくカワイイの最前線で戦っているような女の子たちがバッタでも見るような目であたしのことを見下ろしていた。
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