30話 幽霊談義『霊感は移るのか?』

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 先のエピソード『廃校での肝試し』にも出てきたが、霊感は移る、と言われることが多い。そのことについて、霊感のスペシャリストである坂本と話をしたことがあるので、今回はその内容を書かせてもらおう。        『霊感は移るのか?』 というテーマを設定したとき、【移る派】と【移らない派】が出てくる。ちなみに便宜上『派』という言葉を使っているだけで、どこぞのキノコやタケノコのように、派閥による熾烈な争いがあるわけではないので予めご了承いただきたい。  そもそも『霊感』なんていう非科学的なことについて派閥争いをするなんてことがそもそもナンセンスだろう。そんなこと言ったら「霊感なんて存在しないよ。幽霊なんていないよ。」と言われてしまえば話は終了、元も子もないのである。この小説の根本的な理念でもあるのだが、信じたい人は信じればいいし、信じたくない人は信じなければいいだけの話である。問題なのは「幽霊はいる」「幽霊はいない」という自己の考えを、他人に押し付けたり否定したりすることなのである。ひと昔前はテレビの特番で、わざわざ有名大学の教授や有識者などを集めてUFOがいるだのいないだの議論していたが、本当にくだらないと思う。それぞれ自分の考えを胸に秘めておけばいいだけの話だ。  閑話休題、霊感が移るということに対しての肯定派と否定派の意見をすべてまとめていたらそれこそキリがないし下らないので、私が書きやすいポイントだけを1つずつピックアップする。 【霊感は移る派】の意見として圧倒的に多いのは、 ・自身が霊感がない、もしくは弱かったが、霊感が強い人のそばにいて実際に恐怖体験をしたから。 という、自己の体験談や近しい人の体験談によるものである。 【霊感は移らない派】の意見として多かったのは、 ・そんなにむやみやたらに移るのであれば、全員が霊感持ちになってしまう。 という、まぁ言われてみればそうだな、と納得できそうなものであった。  いろんな意見があっておもしろかったのだが、そんな書き込みや質問板を読み進めていくうちに、さらにおもしろいことに気づく。それは、【霊感は移る派】の支持者はおそらく霊感が強いか微弱な霊感を持っている人が多く、逆に【霊感は移らない派】の支持者は、霊感がなかったりオカルト的な存在にそもそも否定的であるという人が多い、ということだ。  別に私は今回のこのエピソードで「どちらかハッキリさせよう!」というわけではないのでどうでもいいのだが、1つだけ悲しい書き込みを見つけてしまった。それは「霊感は移るんですか?」という質問に対して 「移りません。誰かが『霊がいる!』と言って、別の人が『霊がいる!』となるのは、ただの同調です。」 という回答がなされていたことだ。  私がこの回答を悲しく思った理由は2つ。 ①必ずしもそういうことばかりではないということ。  私は霊感ある人が周りに多いし自身も体験したことがある。同調でも何でもなく複数人が同時に「霊がいる!」と感じた、という出来事もあり、一個人の感情や考えで一蹴されているように感じられてしまったから悲しく感じた。 ②しかし悲しいかな、確かにそういう面もあるということ。  特にテレビ番組などでは顕著だが、周りに合わせないと盛り下がってしまう・冷めてしまう、という日本人気質な考えによる対応は多々あると思う。討論番組でもない限り「今スタジオにも霊が集まっています!」「キャー!怖い!!」となっている中で、「いや、霊なんていませんよ。」などと言ってしまえば冷めてしまうし、間違いなくその部分は撮り直しをされるか編集でカットされるだろう。  テレビ番組が顕著だったのでそれを例に上げて述べたが、友達同士で怖い話をするときも同様だ。みんなで怖い話をし合って「怖いね!」ってなっている中で、「いや?全然怖くなくない?」と言い出すやつがいると、かなり盛り下がってしまう。他人が怖いと言えば怖いと追従し、怖くないと言えば怖くないと追従する、それを臨機応変に対応するのが良くも悪くも『日本人』なのだろう。 ※このページ、これ以下は少し説教臭い内容になるので、興味がない方はどうぞ読み飛ばしてください。  関係ない話となってしまい申し訳ないのだが、あえて1つだけイチャモンをつけさせていただくのであれば、さっきの回答者は回答の仕方が悪かったのだと思う。 「移りません。誰かが『霊がいる!』と言って、別の人が『霊がいる!』となるのは、ただの同調ですよ。」 この書き方では、真っ向から否定しかしていない。この回答者の霊感の有無はわからないが、それにしてもあまりにも断定的すぎるのだ。これはネットリテラシーや思いやりの心などの話になってしまうが、ネット上の書き込みは不特定多数の人に見られるのだから、自分とは考え方や視点が違う人も見る、ということまで考慮すべきである。それが正しいネット社会との付き合い方だろう。  回答者が言いたいことを私が書くとしたら 「私は移らないと思います。誰かが『霊がいる!』と言って、別の人が『霊がいる!』となるのは、『同調しないと!』と思ってしまう心理が働くからかもしれません。」 ぐらいな感じで書くと思う。あくまでもこれは自分の考えだ、ということは常に頭の片隅に置いておかなければならない。もちろん中には「断定的に言ってくれた方がわかりやすい!」という人もいると思うが、そもそも不特定多数の中には目上の人なども含まれるわけで、そういう場においては柔らかい表現をするのがマナーであろう。
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