1話 ガラスの向こう

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 わたくし視世陽木(みせはるき)と、霊感が強すぎる友人の坂本(さかもと)は、学生時代に同じサークルに所属していた。不真面目な学生であった私は、サークルの部室で1日中ダラダラ過ごすことが多く、寝泊まりするのも珍しくなかった。  しかし、部室を私物化していた私が1人で部室に長居しなくなり、宿泊しなくなった出来事があるので、初回はその話を書かせてもらう。タイトルにあるよう、これから綴る話はすべて【実話】である。 ◆  学生時代のある日、いつものように部室で1人まったりと過ごしていた。つい先程までは、後輩数名と小規模な飲み会で盛り上がっていたのだが、真面目な学生たる彼らは、明日の講義のためにと帰宅していった。  若干の寂しさを感じながら残ったお酒をチビチビ飲んでいると、来訪者の気配を感じた。私がに気づいてしばらくすると、ドアが無遠慮に開かれる。 「もうみんな帰ったの?」  ズカズカと部室に入ってきたのは坂本だった。『後輩達と飲んでるけど来る?』というメールを送っていたので様子見に来たのだろう。 「みんな朝イチで講義があるんだとさ」 「ふ~ん。俺は明日は全休だけど、お前は?」 「いつもどおりだよ」 「自主休講ってわけな」  そんなくだらない話をしながら坂本は空いてる席に腰を下ろし、残っていたビールを勝手に開けて飲み始めた。
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