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そんななか、その沈黙を破る声が響いた。
「わたしが、被験者になるわ」
いっせいに会議室にいる人々の視線が集まる。
それは、ナディアの発した声だった。
「………巨大コンピューターの研究、開発に携わったのはわたしよ。研究者として、そしてその知識があるならば、なにも子供じゃなくてもわたしが適任じゃないかしら」
「………ナディア」
ハヤマは、それだけを言うのがやっとだった。
ナディアの突然の発言に、思考はまとまることなくその言葉だけが頭のなかで明滅する。
「アレク、研究室に連絡して。エネルギーの放出がいつまでかわからない以上、急ぐ必要があるわ」
それでも、アレクも思考もハヤマと同様だ。
何度かナディアが声をかけ、ようやく我に返ると室内電話に手を伸ばす。
アレクが指示を出し終えると、ナディアは続けた。
子供たちを守るため、そして研究者としてこれから算出されるだろうであろうデータを自身の脳髄で出してみたい。
そこにいるのは、研究者としてのナディアだった。
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