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「ねえ知ってる?」
『何?』
「昔は春に卒業式があったんだって」
『嘘』
「嘘じゃないわ、春、桜が咲く頃がお別れの季節だったの……」
『でもその方が淋しく無いかもね』
「……淋しくない?」
『だってそうでしょ、桜を思い出してよ、あんなに優しさに溢れた光景って無いわ』
「そうね……6月、梅雨の卒業式って気が滅入るものだものね」
『何時ならいい?』
「そうね私なら秋かしら」
『秋?秋って入学式じゃない?』
「ううん、9月じゃ無くって10月、今みたいな紅葉が真っ赤に燃える季節」
『情熱的なんだ』
「情熱的じゃなきゃ駄目なのよ、優しい桜の季節じゃ貴方を送り出してしまうわ」
『嘘よ……』
「嘘?」
『きっと桜の季節でも貴方と別れるのは淋しいわ』
「嬉しい……」
『嬉しい?』
「だって、私と別れるのが淋しいって……」
『淋しいよ……だって……』
「キスしょっか?」
『………』
情熱の色をした紅葉が2人の事を世界から隠した。
「紅葉色の卒業式も良いかもね♪」
『桜の優しい色も憂鬱な雨も私達の邪魔は出来ないけどね♪』
風に舞う2つのスカートと背中を預け合う2人、1人は蒼く高い空を見つめ涙を溜め1人は赤い絨毯を見つめ涙を溢した。
友達はもう卒業だ。
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