38人が本棚に入れています
本棚に追加
脱皮後の白龍のウロコは白く濁っており、日の光を受けても虹色に輝くことはない。これでは商品価値がないも同然なのだ。
「だから、この子をいじめたの?」
「おそらくはな」
ヴァンじいさんの話を聞いたベルは悲しくなった。同じ生き物で、同じ龍なのに、色が違うだけでそんなにも扱いが違うものなのか。
白龍を抱いてしょんぼりしているベルに、ヴァンじいさんは安心させるように言葉をかけた。
「ベル。白龍にはな、この村よりずっと西に、白龍だけのすみかになっている砦があるそうだよ」
「砦?」
「そうじゃ」
大人になった白龍は、その砦へと自然に向かって飛んでいくのだと言う。
「じゃあ、そこではいじめられたりしないのね?」
ベルが笑顔を向けて言うのに、ヴァンじいさんも深く頷いた。
「決めた! 私、この子が立派な大人の龍になるまで、育てる!」
ベルは白龍を抱いたまま宣言した。
「もしまた森に返して怪我したら大変だもの! ねぇ、おじいちゃん。この子を大人になるまで育てても、構わないでしょ?」
ベルの言葉にさすがのヴァンじいさんもどうしたものかと思案顔だ。ベルの優しい心根には共感も出来るが。
「ベルや。龍を育てるのはとても難しいことじゃよ? ペットではないのだから」
最初のコメントを投稿しよう!