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ヴァンじいさんの言葉に、今度はベルも渋々と食卓へと座る。焼きたての香ばしいクルミの焼き菓子が、ベルの胃袋を刺激する。
「いただきます」
ベルは手を合わせると大好物のクルミの焼き菓子を一口頬張った。甘すぎない生地の中に口当たりの良いクルミの味が広がる。それと一緒に飲むミルクもまた格別においしく感じられるのだった。
一息ついたベルはもう一度、指先に火を灯す練習を開始する。ヴァンじいさんの言う『空間の魔力』をどうにか意識しようとするも、その真意が分からないベルはやはり指先に力が入りすぎてしまいどうしてもうまくいかない。
「ベル。一度指輪をしてみてはどうじゃ?」
ヴァンじいさんの提案に、ベルは机の上に置いていた指輪をはめると指を鳴らして人差し指に火を灯そうとする。
パチン!
指輪をしている人差し指から小さな火が灯った。ヴァンじいさんはベルにそのままの姿勢で居るように指示する。
ベルはその指示に従ってしばらく指に火を灯し続けた。しかし、
ぼっ!
指先の火は乱れ、最後には音を立てて消えてしまうのだった。
「何で?」
ベルの疑問に答えたのはヴァンじいさんだった。
「ベルは魔力をずっと送り続けることが苦手なようじゃな。まずは、指輪をしたまま火を灯し続けられるようにしなさい」
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