7歳の娘と万華鏡

1/1
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

7歳の娘と万華鏡

「ママ、お外に出たいよ!」  7歳の娘は、病室から外に出たがった。きょうは、とても天気がいい。桜が咲いていて、2階の病室にも花びらが一枚、舞い込んできた。春の日差しが、とても柔らかい。  私は、外に出してやりたかった。だけど。 「千華ちゃんは、お外に出ちゃうと心臓に負担が掛かっちゃうのよ。だから、我慢しましょうね」  千華は、生まれつきの心臓病で、長い入院生活を送っている。 「あんなに苦しんだのが嘘みたいだな。元気が出たなら、何かおもちゃを買ってきてやろう。何がいい?」  ふと、夫が言った。  何が良いんだろう……。携帯ゲームみたいなのは、いやだ。きょうのような、鮮やかなピンク色の桜と、優しい太陽の光を楽しめて、飽きないもの。 そうだわ。 「万華鏡……なんて、どう?」  ふと、そう思った。 「万華鏡? ぬいぐるみとか、ゲームとかじゃなく?」 「手作りできるものがいいのよ。千華ちゃんと一緒に万華鏡を作って、それで桜を眺めるの。とってもきれいよ」  私は、万華鏡を作ったことを思い出していた。  ちょうど、千華ちゃんと同じ歳、小学校二年生のことだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!