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お友達の心臓
「だってそうだろ? 赤ん坊の時から、泣いたり笑ったりさ。日に日に大きくなるから、1日1日が違って見えるだろ」
はっとした。確かに、そうだ。
千華は、辛い病気に耐えながら、私たちに思いっきりの笑顔と、くしゃくしゃの泣き顔を、たくさんたくさん見せてくれた。
でも、私たちは、あの子に何をしてやれただろうか-。
ふいに、トントン、ドアを叩く音がした。
「先生がお呼びですよ」
看護師さんが、突然、私たちを呼びに来た。嫌な予感がした。
先生は、難しい顔をしていた。
「千華ちゃんの心臓、思った以上に深刻です。移植以外に、助かる方法は……」
聞いていて気が遠くなった。この厳しい現実を、千華に伝えなければならない。病室に戻って、覚悟を決めた。
「いい? よく聞くのよ。千華ちゃんの心臓はね……」
千華は、万華鏡をぎゅっと握りしめ、首を振った。
「千華ね、お友達の心臓なんて要らない!」
プイと横を向いて、布団をかぶった。千華は、小さな心で、全部知っていたのだ。
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