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小学四年生の夏休み以来、ミカちゃんには会っていなかった。あれからミカちゃんは都会へと戻り、忙しくしているのだと聞いた。
中学生になり、習い事と部活に忙しくなった僕は、祖母の元へ送り込まれることもなくなった。
会えなくなったミカちゃんへは、手紙を書いた。返信は、なかった。
*
少しして、ミカちゃんに関するよくない噂を耳にした。
「結婚資金を使い込まれた上に、婚約破棄されたんですって。何度も悪い男をつかまされちゃって。そんなところまで、ユリエさんに似なくてもいいのにねぇ。やっぱり、あちらの血筋に問題があるんじゃ……」
同情というよりは揶揄するような母の言葉に、僕は思わず噛みついた。
「噂だけで、何も知らないでしょ。母さんにミカちゃんの何がわかるの!?」
初めて声を荒げた僕に、母は目玉を1.5倍くらいむき出し驚いていたけれど。僕は、後悔なんてしていない。
━━ミカちゃん、言えたよ。
優しくも意地悪な男の人に振り回されながら、僕の初恋の人は今日も都会で暮らしているのだろうか。
そんなことを考えて過ごしたのも、わずかの間で。学校生活が忙しくなった僕は、ミカちゃんへの思いを封印したまま十代を終えるはずだった。
十七歳の、あの日を迎えるまでは。
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