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僕は今、長く想いを寄せてきた年上の人を抱きしめている。微笑むと現れる目元の皺を気にする彼女の肩は、少女のように頼りなく儚い。
「本当の気持ちを聞かせて?」
「本当の気持ち……」
彼女を愛しく思う気持ちに、偽りはない。
この瞬間を逃してしまったら、二度と彼女━━ミカちゃんに触れる機会が訪れることはないだろう。
けれど、後悔はしないのだろうか?
僕は自分に問う。
ミカちゃんが子持ちで年上の従姉ということだけが足枷ではなく。僕自身にも、間近に入籍を控えた婚約者の存在があり。彼女から目を背けた最低な行為をしようとしている自覚があるからで……。
ここに至るまでの僕とミカちゃんを語るには、十五年前まで遡る必要がある。
小学四年生の夏休み。
直前に誕生日を迎えた僕は、十歳だった。
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