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高校卒業して就職して、大都会ではないが、都会にある本社に配属が決まり、資材部という部署に配属された。
卒業と同時に父親の姓から母親の姓である「藤代」に変更をしていた。
父親を怒らせて母親を泣かせての変更だったが、父親に引き取られた事を謎に思っていて、今の母と同じ姓を名乗り続ける事に抵抗を感じていたからだった。
何を扱っていて、どういう仕事をするのか全く分からない状態で、自分に出来るのか不安の中で、彼を紹介された。
「君の指導担当になる、須賀さんだ。しっかり仕事を覚えて一人前になって下さい。」
「須賀健斗です。3ヶ月間、指導担当をします。よろしくお願いします。」
爽やかな笑顔で手を差し出された。
「藤代由巳です。よろしくお願いします。」
握手をして頭を下げた。
須賀さんは28歳、十歳上で指導は今年が初めてで緊張してると話してくれた。
いつも二人一緒で(指導だから当たり前だけど)、小さな変化にも気付いてくれて、体調が悪い時は優しく叱ってくれた。
「藤代、具合悪いんだろ?顔色悪いぞ。どうして素直に言わない。そういうのは社会人として失格だ。倒れたら会社に迷惑がかかるんだ。俺には素直に言う事。いいな?」
頭をクシャッとされて、ドキンとした。
尊敬出来る先輩、指導担当、優しいからただそれだけ…何度も言い聞かせた。
朝、顔を見ると嬉しくなる。
自然に口角が上がり頬が染まる。
仕事なんだからと自分の頬を叩いた。
そんな日を何度も通り越して、いつの間にか由巳は恋に落ちていると自覚した。
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