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「後数日…2、3日持てば良い方かと……思います。会わせたい方がいましたら呼んで下さい。」 眠ったままになった由巳を前に医師に言われて、拓巳は森田一家、大倉拓郎、そして由巳の父、井藤俊雄に連絡を入れた。 連絡して直ぐに森田武彦と美和子夫婦は駆け付けた。 武と香奈は仕事が終わり次第顔を出すと言っていたと伝えられて、拓巳は頭を下げた。 卒業式から僅か5日後の事だった。 大倉拓郎が夜の8時頃に来てくれた。 会うのは久しぶり過ぎて、拓巳はその顔を覚えていなかったが、あの写真を思い出したら直ぐに座っていた椅子から立ち上がり頭を下げた。 「遠い所を…すみません。」 「いえ、ご連絡ありがとうございます。意識は?」 「昨日の夜中からなくて…。昨日の今頃は沢山、話をしてたんっすけど…。」 ズッ…と鼻をすすり、泣きそうなのを拓巳は耐えて答えた。 下を向いたまま、椅子を大倉に譲る。 「由巳さん。聞こえますか?大倉です。辛いでしょうけどもう少し、もう少しでいい。頑張って下さい。もう一度、拓巳君に笑顔を見せてあげて下さい。」 個室の病室に酸素と機械の音だけが響く。 「また来ますからね?………由巳さん、もう何も気にしなくていいんですよ?誰にも、悪いとか思わなくて良いんですからね。」 ぎゅっと手を握り話し掛けると、椅子から立ち上がり拓巳を見つめた。 「今日はこれで失礼するけど、また来ても?」 「…はい。」 「拓巳君は大丈夫?」 「聞いてた事なので、大丈夫です。変ですかね?哀しいと思うんですよ、涙も少しは出るし。だけど変に頭の奥が冷めているというか…何処かでホッとした部分もあって、薄情なんですかね。」 「いいや…大事な人がいなくなる時は、自分の心を自分で守るのだと思いますよ。泣ける時が来たら泣けば良いだけです。自分が変とか薄情とか…泣かないから寂しくない訳ではない。泣いてるから本当に悲しいかと言われたらそうでもない。拓巳君はいい息子ですよ。」 他人(ひと)からそう言われて、拓巳は少し安心出来た。
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