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年末で会社が休みに入ってすぐ、今年は初めて一人で迎えるお正月で、もしかしたら須賀も来るかもしれないと、少し奮発して大きなデパートに買い物に出た。 「お節の材料と、お肉、お魚…近所のスーパーが安いかな?一旦帰ってから出直して。とりあえず、お節はここで、飾りと新しいシーツと枕カバー…。」 新年を迎える時は何かひとつ新調を…小さな頃、母がそう話していたのを思い出して煎餅布団でも少しでも寝心地がいい様にとシーツと枕カバーを見に来ていた。 この頃の由巳の頭の中は、須賀を中心に考えられていた。 彼の好きな食べ物、好きな色、彼が居心地の良い部屋。 いつしか一年が経ったらプロポーズをされて、一緒に住んで、暖かい家庭を築けたら…淡い夢を見始めていた。 数時間後、その夢が崩れる瞬間が来るとも気付かずに。
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