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買い物を終えて、長居すると余計な物を買ってしまうと早々にデパートを後にした。 普段は人が多い場所には来ない。 田舎育ちで人波に酔ってしまうからだったが、今日は頑張って良い物を買い物して、良い気分で大通りを歩いていた。 沢山のカップルや家族連れ、幸せそうで見ているだけで自分も幸せな気分になれた。 「おい、お父さんだぞ?はは…良い子だ。」 聞き覚えのある声に驚いて振り向いた。 姿がなくてほっとしていると、左側からまた声が聞こえた。 「買い忘れないか?よし、帰ろう。」 左側を向くと、外に座るスペースのあるコーヒースタンドの様な場所で、席を立ち、小さな赤ん坊を抱いた女性と手を繋ぎ、荷物を持ってあげている須賀が目に飛び込んだ。 「…な…んで。」 茫然として立ち尽くしていると、須賀と一瞬、目が合った。 直ぐに目を逸らされてしまい、綺麗な女性と子供とまるでそこにいる由巳には気付かないみたいに、須賀は平然と歩いて行った。 (気付かな、かった。………目が…合ったよね?) 頭が真っ白になってどうやって帰宅したか覚えてなかった。 気が付くとアパートの部屋にいて、膝を突いて泣いていた。 (あれ誰?かの……彼女に子供?お、お姉さんとか妹さんかもしれない。) 信じたい気持ちが増えるが、甘い子供な由巳にも分かる事はあった。 お姉さんならその場で無視はしない、恋人なら紹介してくれるはずだ。 それが恥ずかしいとしても、会社の部下として声を掛けて紹介してくれたらいい事で、それをしないで知らない振りをしたのは、由巳の存在を知られたくない相手だからという事になる。 須賀の行動がそれを教えていた。
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