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仕事は自分なりに頑張って、成果が見られる様になって来て後輩も出来て充実はしていた。
7月も終わりが近付くと、去年を由巳は思い出す。
まだ須賀とは付き合っていなくて、ただ憧れて片想いをしていた。
側にいるだけで幸せだった。
今は幸せだけど辛い、好きだけど哀しい。
別れたいのに別れられない。
泥沼の意味を本当に理解した。
8月になり、お盆休みに明日から入るという日。
さすがに何処の会社も早めに終わる様で、仕事も少なく終わった人から早めに切り上げて帰っていた。
人が少なくなった所で机で仕事をしていた由巳に須賀が話しかけた。
座っている横に立ち、由巳の後ろの少し離れた席にいる課長に聞こえない様にボソボソと話した。
「もう終わる?これからご飯行かないか?久し振りにゆっくりしようよ。」
「人がいる。」
青ざめて言うと、メモを渡された。
「お疲れ様!お先にね。」
ポンと背中を叩いて、須賀は後ろを振り向いて課長にも挨拶に行った。
その隙にメモを見た。
ーーグランドホテル、11階 1108 タクシー使って。ーー
つまりは会社から少し離れたホテルで部屋を取って待つという事か、とため息が出た。
須賀が何を考えていて、奥様とどういう関係性になっているのか、努力しているという奥様はどんな努力をされているのか、聞いてもいつも誤魔化されていた。
だから今日こそ聞こうと決心して、早目に終わらせて16時過ぎに仕事を終えて会社を出た。
メモと一緒にタクシー代と思われるお札がメモの下に置いてあり、それで言われた様にタクシーに乗り、地下駐車場に停めてもらった。
部屋の前に立ちインターホンを押すと、須賀が笑顔で部屋に招き入れた。
ドアを閉めると直ぐに抱きしめられた。
「会いたかった。今日は早い時間からゆっくり出来るね。」
肩を抱いて部屋の奥へ連れて行かれる。
ソファに無言で座ると、どうしたの?という様な顔を向けられた。
「シャワー先に行く?」
正直に言えばこの頃にはそれしかないの?と19歳の馬鹿な女でもそう思った。
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