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「今日はゆっくり話せると思って…。」
口を開くと怪訝な顔を由巳に向けた。
「また別れ話?別れないって言ったよな?」
ため息と共に須賀は前の椅子にドカッと座る。
「別れないっていうならちゃんと教えてよ。どうなってるのか。」
「どうって?」
「奥様は修復の為に努力されているんでしょう?健斗はそれを見てなんとも思わないの?」
「5年、待ってほしいと言ったはずだよ?子供が俺を理解出来るまで。」
「その間、奥様に無駄な努力を続けさせるの?騙しているのよ?私は耐えられない。」
「今すぐ離婚したら納得するの?」
冷たい声がした。
「俺の事はもう愛してないの?」
畳み掛ける様に言われる。
「俺が家庭があるから、由巳はそれで俺を嫌いになるの?俺は好きなのに?」
黙って下を向いていると、須賀は横にゆっくりと来る。
「俺を捨てるんだ…由巳は。」
パクッと耳たぶを甘噛みされる。
「違う、捨てるとかそういう事じゃないでしょ?」
手で耳元を払いながら言うと、後ろから抱きしめられる。
「俺が結婚してたら捨てる、してなかったら結婚を迫る?それってさ、結局、結婚出来たら相手は誰でもいいって事?ひどいね、由巳。俺は本気で愛しているのに…。」
耳元で静かな声が聞こえる。
「そんな、事、思ってない。私だって、私もちゃんと健斗の事好きだもの!だけど、頭から離れない。こんなの絶対間違ってる!」
振り向いて立ち上がり叫ぶ。
「うん……間違ってる。」
須賀はにっこりと笑い、由巳の身体を抱きしめた。
「間違ってる。それは分かってる。だけど、それでも好きなんだ。どうしてこの気持ちを捨てなければいけないの?苦しいよ…由巳。側にいる大事な時間なのに、こんな話で終わるの?」
(結局………また泥沼。)
甘い優しい手、翻弄されて乱されてひと時の快楽を与えられる。
安らぎはもうないのに、終わらない恋が続くだけ。
最後には由巳はいつも泣いている。
須賀はそれさえも見ないのに…。
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