1785人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
翌日はお盆休み突入の日。
ただし新入社員と一年目は休みに入った事を知らない取引先等への対応の為に出勤予定だ。
何処の課も同じ。
それぞれの会社が同じ日に一斎に休みに入る訳ではないからだ。
電話を受けたら本日よりお休みを頂いていますと伝えて、休み明けに担当から連絡でいいかを確認して、紙に書いておく。
さすがに一年目は午前中だけ。
新入社員のお目付役と言ったところになる。
15時終了予定。キラキラした目の新入社員が眩しく感じた。
11時過ぎ、廊下が騒がしくなり、何だろうと廊下に出た。
須賀が誰かを塞いでいる様に見えた。
「あ、あんた!あんたよ!!この泥棒猫が!!」
凄まじい形相で近付き、須賀を跳ね除けて由巳の目の前に来たと思ったら、同時に大きな音がして、髪を捕まれて廊下の床の上に跪かされた。
痛い、と思い自然に手が頬と頭に行く。
目の前の人は須賀の奥様だった。
止める男性3人を吹き飛ばし、体を揺さぶられ何度も叩かれた。
「痛!あの、何か………誤解が……。」
言ってはいけない、須賀にも迷惑がかかる。
必死に耐えて、誤解だと繰り返した。
「何が!ふざけるんじゃないわよ!!」
鞄でガッ!と頭を叩かれて、その場に倒れ込んだ。
「おい!やり過ぎだ!誤解だ、お前、これ傷害だぞ!」
須賀の声が聞こえて、さすがに誤解だったら傷害と思ったのか、やっと暴力が止まった。
そこで由巳は意識を失くした。
目が覚めると会社内の救護室に寝かされていた。
幸いというか、嘱託医がいる日で事を大きくしたくない会社は救急車を呼ぶ事も躊躇ったらしかった。
頭には包帯が巻かれて、顳顬と額がズキズキと痛んだ。
起き上がると、腰や背中に痛みが走り、両腕にも絆創膏やガーゼ、湿布が貼られていた。
足をベッドの下に下ろすと背中に痛みが走る。
「痛っ!」
その言葉でカーテンが開いた。
「起きた?どうかな気分は?」
「ご迷惑をお掛けしました。平気です。」
「平気じゃないでしょう?髪の毛もかなり強く引っ張られて、鞄の金具の所が当たったみたいだから、明日病院行ってレントゲン撮ってもらって。紹介状書いたから…。」
紹介状を受け取ると、ゆっくり立ち上がろうとした。
体のあちこちが痛くて仕方がないけど、このまま寝ている訳にもいかない。
「あ、起きたね。どうかな?話は、出来そうかな?」
普段から優しい課長が入り口の所に立っていて聞いて来た。
頷いて課長とゆっくりと歩き出した。
課長の説明を聞きながら会議室に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!