4

5/7

1785人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
「無理はしなくていいから、体が辛くなったら直ぐに手を挙げていいから。」 「奥様は?」 「うん、帰られた。須賀と話をしてね。須賀も誤解だから、間違いだったら由紀のした事は傷害罪だぞ、とか最初は言ってたんだ。だけど奥様ね、5月頃から何かおかしいと思われていた様で、興信所に調べてもらっていたらしい。これね、奥様が君に。治療費は請求してくれていい、ひどい事をした、けど謝る気はない。弁護士と話して下さいって、任せてあるからって奥様の弁護士の名刺。お落ち着いたら連絡して……いや、早い方がいいかな。」 名刺を受け取り、頷いた。 (完全にばれたんだ。) 自分の事より須賀を心配した。 奥様と離婚してお子さんに会わせてもらえるのだろうか、奥様が会社に乗り込んで来て、須賀の仕事は大丈夫だろうか。 会議室に着いて、課長の後に続いて入る。 入り口前の席を課長が進めてくれて、お礼を言い、腰を下ろした。 「ん…。」 動くと背中や肩の辺りが痛んで、苦痛の表情を浮かべた。 「大丈夫?ゆっくりでいいからね。」 課長が言い、由巳が座ったのを確認すると、四角く中央が空いている机の向こう側に課長は座った。 課長の隣に部長が座っていて、書類を見ていた。 右の真ん中にポツンと須賀が座っていた。 チラッと見ると、一瞬だけ目が合い、安堵の表情を見せてくれた。 「では始めましょう。先程まで須賀君の奥様と話をさせて頂いていました。須賀君も君との不倫関係を認めました。藤代さん。あなたは認めますか?」 部長に聞かれて須賀の方を見たが、須賀は下を向いたままだった。 「はい。認めます。」 須賀が認めたなら、由巳に隠す事も嘘も必要なかった。 「須賀との事は奥様と話をするべき事で、そこに会社は口出しをしません。ですが不倫していた社員をこれからも平然と使う事は出来ません。処分は致し方なしと考えて下さい。」 「………はい。」 「処分に当たり、藤代さんの言い分をお聞きしたい。須賀君からは聞きました。よく考えて答えて下さい。須賀君とはいつからのお付き合いですか?」 「指導担当を終えてから、です。」 「あなたが誘いましたか?」 「いえ!確かに、良い人で恋心はありましたけど…告白は須賀さんから…言われました。」 「奥様がいると知っていて、どうして断らなかったのですか?」 部長の言葉はどんどんキツい言い方になっていた。 「し、知らなかったんです。独身だと思っていて…だからお断りせずに。」 「そんな事ないでしょう?飲み会に行けば子供が産まれた話も須賀はしています。同じ課にいたら自然と耳に入るでしょう?結婚指輪だってしているのに…。」 そんな白々しい、と部長が囁いた。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1785人が本棚に入れています
本棚に追加