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「それなら…私の方からも要望を言ってもいいでしょうか?」 「勿論です。他に何かありますか?」 「我儘だと思いますし、奥様はお嫌だろうと思いますが、もう一度だけ…須賀健斗さんと二人で話しがしたいです。それを最後に会わないとお約束します。それとその時に須賀さんに二度と私に近付かないという誓約をお願いしたい。勿論、私も誓約書を書きます。私だけお約束して須賀さんがうちに来たら、また私一人が責められて、奥様にお金をお支払いするのはどうしても納得出来ないので…。」 仮だと言われた書類には、須賀健斗に近付いた場合、罰金として5万円を払うと書いてあった。 これが目に留まった時、須賀が勝手に来ても自分一人がお金を払うなんておかしい、奥様がわざと近付けさせてお金を取る手段にしないだろうか、とまで考えてしまっていた。 「……うん、なるほど。ではこうしましょう。会うのはここで。勿論、私達は奥に控えていますが、それ位は宜しいですね?」 「はい。」 「その時に誓約書を交わしましょう。藤代さんが近付いた場合、須賀由紀さんへ罰金を、須賀健斗さんが藤代さんに近付いた場合、藤代由巳さんへ罰金をという誓約書を作ります。それならば公平と言えます。」 「奥様は…それで納得されますか?」 「はい。藤代さんは先ずは明日、出来るだけ大きな病院に行き、しっかりと診察と検査をされて下さい。こちらの病院をお勧めします。それから診断書をもらって来て下さい。怪我の大きさによっては須賀由紀さんも異議はないと思います。これ位しか、あなたの代理人でない私にはアドバイスは出来ませんが。」 「いえ、十分です。ありがとうございます。」 ソファから立ち上がり、深々と頭を下げた。 由巳の目にはまた涙が溜まっていた。
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