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大倉弁護士が大変に人情味のある温かい人であった事が、今の由巳には救いだった。 出口で深々と頭を下げて、事務所を後にした。 その足で真っ直ぐに会社へ向う。 重い足取りだが、普段よりは人のいない会社はシン、と静まり返っていて、その静けさに息が出来た気がした。 12時半、この時間なら出勤している人もお昼に行って少ないはずだと、それでも堂々としようと、思いながらも下を向いたまま部屋に入った。 二人の人間がそこにいて、入って来た由巳を見ているのが分かったが、気にしない様に自分の机に行き、片付けを始めた。 昨日は会議室から直接、更衣室に行き、ロッカーを片付けて帰っていたので、机の私物を片付けたら終わりで、元々由巳は他の人より私物も少なかったので、持参したトートバッグと紙袋で十分だった。
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