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「今まで一緒にいただろ?お互い性格とか結構理解出来たと思うんだ。良い子だなってずっと思ってて、頑張り屋で真っ直ぐで…ちょっと頑固?」 「え、え〜!頑固じゃないですよ。」 冗談ぽく否定して、心臓はドキドキと音を立てていた。 須賀に聴こえるんじゃないかと思うくらいに。 「ははっ…。でさ、俺で良かったら、その…付き合ってくれないかな?藤代の事、本気で好きなんだけど。」 照れた顔で言われて、由巳はポロッと涙を流し、コクリと何度も頷く。 「ほんと?いいの?」 「……はい。嬉しい、です。」 「ありがとう。」 ぎゅっと抱きしめられて、その暖かさに幸せを感じた。 誰かに抱きしめてもらう事が、こんなにも幸せな気持ちになるんだと、由巳は最後に抱きしめてもらったのは誰かを考えた。 亡くなる前の母だった。 (お母さん、優しい人だよ。幸せになるからね。心配しないでね。) 須賀の腕の中で、由巳は母親に語りかけていた。 その日、須賀はすぐに帰り、帰り際に明日の昼、一緒に食べようと、近くの喫茶店を指定した。 約束の時間に行くと須賀はまだ来ていなくて、一人で入る喫茶店に落ち着かず奥のテーブルに座った。 10分程して須賀が来るとその笑顔に安心して今までの不安が消えた。 「何食べる?決まった?」 席に座ると直ぐにメニューを出して聞いてきた。 「ううん、まだ。一緒に頼もうと思って。」 「そっか。」 頭を撫でられてオムライスを一緒に食べた。 食後のコーヒーが運ばれて来ると須賀が大事な話があると言い出して、由巳は昨日の事はなかった事にしてくれと言われるのかと顔色が悪くなった。 「由巳?そう呼んでいいよな?恋人だから…。」 その言葉で顔を上げる。 「う、うん。嬉しい。」 「うん。ありがとう。でね?話なんだけど、お付き合いの事、会社にも会社の中の人にも出来れば友達にも内緒に出来る?」 一瞬、キョトンとした。 別に言い触らすつもりはなかったが、聞かれれば答える位のつもりでいたからだ。 「いいけど…どうして?」 深く考えずに訊き返していた。
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