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33.☑
赴任先で元夫がインフルエンザに罹った時に様子を見に来てくれた
女性だって相手が元夫じゃなくて、ジャガイモのような顔をした
如何にも女性と縁遠い容姿の男性だったなら、2日間も
訪ねてきて細々と世話をやいてくれただろうか?
聞くところによると、初日は汗まみれになったパジャマ代わりの
スエットまで洗ってくれたらしい。
きっと脱がすのも手伝ってもらってたんじゃないかな。
元夫は病気で動けない病人だから世話をしてもらったと思ってるのかも
しれないけれど、女性のほうに1mmも下心がなかったと言えるだろうか。
きっとその女性は前々から元夫に好意を持っていたと思う。
私の母が突然訪ねて行って、ふたりでひとつ部屋の中にいる所を見られ、
あの後女性は元夫に接近するのを止めたのか、はたまたあの時のことを
きっかけに妻が側にいないのをいいことに親密になったのか、
知る由もないけれど。
私はそんな異性問題で悩まないでいられる男性と
結婚したから、今となっちゃ知ったこっちゃないって感じ。
「俺はそんなに信用をなくしてたのか?
君を欺いて不倫していると思われていたのか?」
君のことを妻として大切に思っていないと思われてたんだ?」
由宇子は瞬きひとつせず真っ直ぐに俺を見つめてきた。
その瞳に後悔や言い訳や、そしてそんな感情と共にもはや俺に対する
怒りさえも灯ってはいなかった。
何故ならその瞳は確かに俺を見ているのだが
心が……
魂が……
俺の目を突き抜け、遥か遠くを見ていた。
そしてもはや、俺の問い掛けに由宇子が答えることはなかった。
今度こそ俺は元家族の住む家を出た。
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