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「さっきの撮れた?」
「うん、ばっちり撮れた」
「態々振り返ってカメラレンズに顔向けてやんの」
「こっちの要求通りなんですけど~」
「お誂え向きのすげえブス」
「おまけにすげえデブ」
「二重顎だし~腹思いっきり出てるし~」
「マツコ・〇ラックスも顔負けのしもぶくれじゃん」
「それより安藤〇つに似てなくね?」
「そうそう、容貌だけじゃなくて、このオカッパと言い、眼鏡してるところと言い、安藤〇つに瓜二つやん」
「ほんとマジ受けるんですけど~」
「服もダサい感半端なくね」
「このシャツのカラー、もろドブ色じゃん」
「クソ色とも言えなくねえ」
「どっちにしろマジやべえ」
「おまけにクソの垂れ流しみたいなきもい模様」
「それでいていっちょ前にマスカラ塗ってやんの」
「メスブタが塗ったところでどうなるっつうのよ」
「滑稽になるだけじゃん」
「それって図星っつうか、めっちゃ図星じゃねえ」
「なのにロリロリなフリル付きのスカートなんか履いてやんの」
「きも~!」
「それがまた身の程知らずにもチョーミニ」
「おえ~!虫唾が走る~!」
「すんげ~目の毒だっつんだよ」
「めちゃめちゃ大根足だも~ん」
「これってすごくね」
「マジふってえ」
「この太さ、やばくね」
「これ、太すぎだろ」
「これならサイと相撲取っても勝てちゃうよ」
「ゾウにも勝っちゃわね」
「メスブタなのに」
「ハッハッハ!」
「ハッハッハ!」
「どんな相撲だよ」
「想像つかねえしみたいな~」
「ハッハッハ!」
「ハッハッハ!」
「でも、この腐女子なら有り得なくね」
「ショーちゃん、腐女子と見たか」
「だって腐女子のオーラ出まくってね」
「うん、そう言やあ出まくってる」
「こんなのが僕たちをおかずにしてると思うと、めちゃめちゃきもくね」
「うぇ~!めちゃめちゃきも~い!」
「僕たち、いつも意気投合するね」
「うん、そうだね」
「ふふふ、マーくん!」
「ふふふ、ショーちゃん!」
そう呼び合って二人は遂に抱き合った。
こんなおいしいシーンに出くわすなんて腐女子にとって涎もんの堪らなく嬉しいことなのに居た堪れなくなっていた私は、この隙にと思ってスマホをショルダーバックに仕舞うと、席を立ち、別の車両に移った。
私はがっくりと項垂れて席に着いた。
確かに二人はスマホで撮った画像の女について喋っていたのであり、その間、私に一瞥もくれなかった。
しかし、二人のえぐい程に扱き下ろす言葉が悉く自分に当てはまるような気がした私は、自分のことを言われているようで酷く落ち込むと共に美少年に幻滅した。
車両内に誰もいないのを良い事に空知らぬ雨にしっぽり濡れる哀しい私。
けれど泣きながらも顔を上げ、車窓から見える流れゆく景色を眺めながら腐女子を卒業するべくダイエットして男を作ろうと私は意欲的に前向きに思うのだった。
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