幕間 不幸な俺の日常 1/2

1/5
64人が本棚に入れています
本棚に追加
/63ページ

幕間 不幸な俺の日常 1/2

俺は藤友晴希(ふじともはるき)新谷坂(にやさか)高校の1年だ。 俺は運が悪い。4月、学校が始まってまだ3日目のこの日も、いつもどおり運が悪かった。 いま俺は、電車で辻切(つじき)センター駅に向かっている。最寄りのターミナル駅だ。 新学期早々、買ったばかりの携帯が壊れた。気がついたら電源が切れている、ということが昨日から3度。もちろん充電は欠かしていない。 昼休みに診断ソフトを試してカスタマーに確認した結果、事務的な声でバッテリーの初期不良のようです、と言われた。そのまま今日の夕方に予約を入れる。 さすがに初期不良は防ぎようがないな。 郵送でも対応できるそうだが、その間携帯が使えないと困る。俺の周りにはLIME魔がいる。未読スルーは許されない。 それなら30分ほどかけて電車で辻切センターまで行って交換してくるほうがいいだろう。 そう思って先ほどから、南に向いた車窓から夕陽が差し込む電車に揺られている。 俺がさっきからオレンジ色に照らされた自分のてのひらをぼんやり見つめているのは、向かいの席の小学生くらいの男子にずっとにらまれているからだ。顔に見覚えはない。 この新谷坂には4月に引っ越してきたばかりで、こっちにはまだ知り合いもいない。俺が電車に乗った後に乗ってきたから、ぶつかって因縁をつけられたというわけでもなさそうだ。 とりあえずなるべく顔を合わさないようにする。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!