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二人しかいない生徒会室に響くのは、私のため息と机を指で叩くトントンという高い音だけ。いつも通りの生徒会室は、いつも通り不快指数が高い。
どうしてこうも面倒ごとを押し付けてくるのだろうか、このキザったらしい男は。
「じゃ、よろしく頼むよ、美麗」
後ろから覗き込むように肩を叩くこいつの顔面を平手打ちしてやりたい衝動に駆られたが、それは遥美麗のする行動ではない。
「いつになったらこの生徒会長は自分の仕事をするのかしら。それとも、トイレの場所も覚えられないようなボンクラだったかしら?天下の花島くんは」
精一杯のジャブを叩き込むと、愉快そうに笑って会長席に戻る彼は、花島悠人。学院に通っているものならば、まず知らないものはいないという有名人だ。
そして、私の最も嫌う人間でもある。
「やだな美麗。俺が仕事をしなかったことがあるかい?あの時だって……」
まったく、こいつという男は、いつまでも過去に拘るつまらないやつだ。
「たった今進行形でしていないわ。あと、私のことは風紀委員長と呼びなさい」
おお怖い怖いと腕をひらひらさせて髪を搔き上げる男と。
ため息と一緒に日頃の鬱憤を吐き出したい私と。
生徒会室には、いつもこの二人しかいない。
それが日常で。
諦めるしかないと。
けれど、彼女は――。
ふと、携帯のバイブ音が鳴った。
そんな、ふとしたきっかけに、彼女は現れたのだったな……。
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