ハロウィンの奇跡

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柚木(ゆずき) 里奈(りな)、26歳。 職業、営業事務。 「(けん)ちゃん、かっしー、おはよう。trick or treat?」 「うわぁ……ハロウィンで浮かれたバカ発見」 会社に着き、剣ちゃんこと剣崎(けんざき)君とかっしーこと鹿島(かしま)君を見つけてハロウィンのお約束な挨拶すると、2人は冷ややかな目で私を見てきた。 剣ちゃんとかっしーは会社の同期で、まぁ私が女性として見られてないというのもあるが、男女の友情が成立するほどウマが合う。 「大体、trick or treatって子供が言うセリフだろ?」 かっしーは鼻で笑いながら私に向かって話す。 「いいじゃんいいじゃん。私だって気持ちはまだ10代なんだから」 「はいはい。ほら、飴ちゃんあげるから早く仕事しろ」 剣ちゃんは呆れ笑いをしながら、ポケットから飴を取り出し私にくれた。 「えー、レモン味?」 「贅沢言うな」 三人で立ち話をしていると後ろから男性が来て、剣ちゃんとかっしーの間から手を伸ばし、二人の肩をガシッと掴んできた。 「朝から仲が良いな。でもそろそろ仕事の時間だぞ」 「あっ森島(もりしま)先輩。おはようございます」 森島(もりしま) 祐希(ゆうき)、剣ちゃんとかっしーと同じ営業一課の先輩。いつも爽やか好青年って感じの人。サラッとした黒髪にどこか色気のある眼差し……女性人気NO.1だ。 そして……私もそんな森島先輩に好意を寄せている一人だ。 「じゃあな、柚木」 剣ちゃんとかっしーは森島先輩と話をしながらその場を去った。 「いいなぁ、2人とも。私も森島先輩と話がしたいな」 森島先輩の後ろ姿を眺めながら、私はそっと呟いた。
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