鬼の目にも涙

1/30
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
 もう我慢できん。叫ぶぞ。 「あーーー忙しい。人間どもめ。どんだけ地獄が好きなんだ」  ふぅ……少しスッキリした。  さて……。俺様は鬼だ。しかしただの鬼ではないぞ。鬼の中の鬼。鬼の王だ。地獄を統括する鬼王だ。  鬼王だ。  大事なことだから二回言った。  荘厳で格式の高いこの素晴らしーい城も俺様のものだ。  そんな城に先ほどの俺様の声が響き渡っていいる……。  凄いな! もう十秒ぐらいになるのに。いまだに俺様の声が反響しておる。  しかし、周りの鬼共は我関せずという感じでスルーしやがる。くそが。  まぁいい。仕事に戻るか。  再び、手に持っている資料に目を移す。  はぁ……。なんだか最近、やたらと死者が地獄に落ちてくる。  地獄に落ちるかどうかの審判はパワハラじじい……。いや、閻魔様が適当に……。いや、厳格に行っているから俺様が口を出すことはしない。いや、できない。  俺様の仕事は、地獄に落ちてきた者を住民として登録し、現世での罪状に応じ住居や罰を定めることだ。  だが、それで仕事は終わらない。  住民が転生して新たに現世へ戻るまで、悪さをしないように監視をしなくてはならん。  現世での罪が重い輩ほど転生まで時間がかかる。質が悪いことにな。  揉め事を起こす輩にはすぐに罰を与えんとアカンしな。  最近はやたらと地獄に落ちてくる輩が多い。まさに猫の手も借りたい状況だ。  しかし、最近は地獄にも働き方改革の波が押し寄せ、鬼達にもちゃんと休みを与えなければならなくなった。  そのしわ寄せがこの俺様に降りかかってきた訳だ。  もう死にそうだ。俺様。  イライラが溜まるが、何か言うとすぐにパワハラとか言われる。  全く、地獄も変わった。  天国でのうのうと暮らしておる神様の奴とは違う。こっちの仕事を手伝えや。  閻魔様も立場上地獄の主なんだが……。手伝ってくれないかなぁ……。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!