【そんなつもり、なかったんだけど……】

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 【そんなつもり、なかったんだけど……】

     【そんなつもり、なかったんだけど……】 「ねえ、宵乃(よいの)はどこいく~?」  帰り支度をしているわたしの前に、有素(ありす)のまる顔が覗いた。  高校生活が始まって三週間ほど―――。  やはり友人などそうすぐにはできないだろうと思っていたわたしに、彼女だけが入学式当日から話しかけてきた。  そのふくよかな体型を裏切らない大らかな性格から、クラスの誰とも明るく接していた彼女だったが、どういうわけか、特にわたしには親しみを持っているように感じた。自分と正反対の性格に興味を抱いてのことか?  こんな経験は今までなかったので、はじめは大いに戸惑った。が、屈託のない彼女の態度が、すぐに内向的性格を緩和させた。  なんのこと? という顔を見せると、 「クラブ。どこ入るつもり?」  ふっくらした掌を机につき、彼女は顔を寄せた。 「ああ……」 「うち、クッキング部いこうと思うんだ~。部活でもなにか食べられるってサイコーじゃな~い?」  お昼のカフェテリアで見せるのと同じにこやかな表情を、彼女は浮かべた。  わたしもへたな微笑をつくって、「うん」小さく頷いた。 「ねえ、宵乃も一緒に入らない? そうすれば部活の日だって一緒に帰れるじゃない」 「うん……そうなんだけど……」 「あ、やっぱりほかに入りたいところあるのか~」  彼女の眉が少しさがった。 「ううん、そうじゃないんだけど……あまりわたし、団体活動って……」 「そっか~。そうよね。人には合う合わないってあるもんね」  誘いを断る申し訳なさもあり、伏せた目でいったわたしを、彼女は明るい声ですくいあげてくれた。 「オッケ~。でも、部活ないときは今まで通り、一緒に帰ろうね」  念を押すようにいった彼女は、顔同様まるい目を細めながら、 「じゃあまた来週!」  元気な言葉を残し、未だざわつく教室を去っていった。  わたしの性質を受け入れてくれている彼女に感謝しながら、席を立った。      *  晴天のもと、校庭や、そこから校門に続く道で行われている新入部員勧誘会は、お祭り騒ぎという表現がぴったりだった。
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