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旅立
十五になったばかりの息子の背に彼女は微笑みながら行ってらっしゃいと告げた。
まだろくに世間を知らない、ただ父親の影響で人よりも武器の扱いに長けているだけの少年は、国中の無責任な期待を受けて踏み出して行った。
そうそうたる大国が正式に送り出した大軍が攻めきれなかったばかりか、ほぼ壊滅に追い込まれるほどの呪わしき力を抱えた悪魔の軍隊。
事の起こりは田舎の魔術師だと言われている。
彼が欲望を叶えるために呼び出されたとされる魔王は、召喚者をその場で殺害し、初めて知ったこの世界に次々と配下を呼び寄せた。
彼らにとって人類はあまりにも脆弱で容易く支配でき、さらに格好の捕食対象でもあった。
事の深刻さは敵対していた国家間にさえ同盟を作らせ、人類対魔王という構図が出来上がるほどだったが、人の軍勢は魔王のそれに歯が立たなかった。
そこで各国は方針を変えた。軍隊で敵わないのなら目立たぬ少数精鋭で敵に潜り込み、暗殺を果たそうと言うのだ。
そんな理由で彼女の息子も選ばれたのだ。
国王に世界を頼むと告げられ、実物の剣と盾を持たされた彼は一人前と認められたと思った事だろう。年端の行かない子供は大人の醜さを疑う事無く真っすぐな目でそれを受け、期待に応える為に身を正したのだろう。
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