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それなりのお付き合い。
やる事だってとっくにヤったし。
ただ、中学から既に『遊ぶ事』が大好きだった翔が相手を俺一人に絞る事は無かった。
常に誰か傍に居る。
今日の様に、可愛い女の子だったり、大人の綺麗な女性だったり。
…ま、男だったりと。
それが唯一俺たちの関係を知る峰元には面白くないみたいだ。
アイツは結構イイヤツで優しいから、フラフラした態度の翔が信じられないと俺に何度も言ってきたし。
今日だってラーメン食いながら、『お前は変だっ!あんなの好きなんて!!』と、盛大に汁をこちらに飛ばしながらダンダンとテーブルを叩いていた。
――本当、いい奴。
ぷっと思い出し笑い。
と、その時コンコンと鳴る俺の部屋の扉。
「晴樹?翔君来たわよぉ」
「あ、どうぞ」
母親の声に促されながら、入ってきたのは翔。お気に入りのグレーのシャツに細身のジーンズ姿。こんなラフな恰好も似合う。
「よっ、晴樹。宿題終わった?」
「もーすぐ。適当にしてろ」
近くの雑誌や携帯ゲームを放れば、頷きながら翔はベッドへと寝転んだ。
ゴロリと動く度に布擦れする音。
翔と一緒に居るんだと嫌でも認識させられ、自然と俺の心は弾む。
この時間が大好きだ。
「なぁー晴樹ぃ」
「ん?」
視線はノートから外さずに俺の名を呼ぶ翔の声に耳を傾ける。翔から名を呼ばれるだけでも心地良い。
「な、今日の子見た?すげー可愛くね?」
今日の子?
一瞬誰だと首を傾げそうになったが、あぁと思い出される女の子。
翔が帰る時に居た子だ。
三年の先輩。
「あー可愛かった。あれ先輩だろ?結構人気あるんじゃね?」
此処に峰元が居れば、『お前等は阿呆かぁぁぁ!』と怒声の一つでも浴びせられそうな会話。でも、これもいつもの事なのだから、気にする程の事は無い。
「だろぉー!杏奈ちゃんって言うんだぁ」
翔の嬉しそうな声。
「杏奈さん…名前まで可愛いなぁ」
心底本当の気持ち。だってそう思うんだから。
「胸も結構大きい感じだったし、今までじゃ一番可愛いだろぉ?本当お前っていいの捕まえるよな」
よし。終わった。宿題終了。
くるっと椅子を回転させて、翔へとそれを放ろうとしたがベッドの上の翔はこちらをガン見真っ最中。
黒いガラス玉は俺を映している。
「…翔?どうした?」
何か付いてる?
まさかさっき食った夕飯の肉じゃがが…。
口元や頬を触ってみても、それらしきものは見当たらない。
「翔?宿題終わったぜ。何、何でそんなに俺見てんの?」
具合でも悪いのか?
立ち上がってベッドへと近づき、翔の額へと手を伸ばした。
――――グイ
「わっ…!」
伸ばした手は簡単に翔から絡め取られ、俺の身体は引っ張られるが侭にベッドへと叩き付けられた。
柔らかくて良かった。
顔面から突っ込んだ為に、スプリングが利いたベッドではぎしりと音を立てたがやっぱり痛みは無い。
「翔?」
一体何だと俺の上にある顔を見上げれば、唇を尖らせて面白く無いみたいな表情。
「どうした?」
「杏奈さんさぁ…今日ヤらせてくれなかった」
成程な…
そりゃあんなな豊満なものが眼前で揺れてるのに、お預けなんて男としては辛いだろう。うん、眼に毒だ。
俺だって少しは気持ちが分かる。
ヨシヨシ。
拗ねた風に俺の肩口にぐりぐりと唇を寄せる翔の頭を撫でてやる。柔らかいサラサラの髪が指の間を通り抜けて質の良さが気持ちいい。
「晴樹ぃ」
甘えた声は確かな意味を持って。
「…ヤろうよ」
「…だろうな」
さっきから太腿に当てられていた熱が言葉よりも先にそれを物語っていて、気付かない筈も無い。しかも翔の手は既に俺のシャツをぐいぐいと引っ張って、Mサイズが明日にはLサイズに変貌を遂げそうだ。
「待てって、翔」
「…駄目って事?」
そんな悲しそうな顔しないで欲しい。
「違うって…。自分で脱ぐから」
「晴樹ぃ」
途端に嬉しそうな顔になるのに俺も嬉しくなる。
けど、これで決定だ。
欲求不満な翔に付き合えば俺は明日使いモノにならなくなる。そうしたら、また峰元からお説教。
容易に想像がついて笑えてしまう。
「翔。今日は母さん居るから、声さないから。お前もそのつもりでな」
「分かってるって」
――じゃ、いいけど。
何だかんだ結局はこうだから。
降って来る唇に同時に眼を閉じる。
汗ばんだ肌に乾いた掌が這うのが、また俺の興奮を誘ってズクンって腰が重くなるのが分かる。
翔との行為は気持ちいい。
好きな相手、だって言うのも理由の一つかもしれないけど、やっぱり翔が慣れてるからツボを知ってるって言うのもあるかもしれない。
――まぁ…
「…っ」
「痛、い?も、…ちょっと…待とうか?」
やっぱり最初に挿れられる時の衝撃だけは俺は慣れない。
内臓をモロに内側から押される様な感覚に眩暈がする。クラリと霞む視界で必至に手を伸ばして翔の肩を掴めば、ぎゅうっと子供を抱っこするみたいに俺の背中に腕を回してくれた。
「…だいじ、ぶ…」
「そう?」
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