ウレシウレシトナクココロ

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一代決心と言うやつだ。 あまりの緊張感に足、つか、膝とか、ぎゅうっと汗が溜まりまくった拳とか、さっきから震えてて止まらない。 えぇい、頑張れ、俺っ!! 決めたんだろ、俺っ!! ドクドクと鳴る心臓音がやたらと煩いけれど、これも演出の一つだと思えっ!! と、言う訳で。 「俺はお前が好きだ」 もう既に見ていない、ゲーム画面。コントローラーを放り投げ、ベッド脇を見る。 口に出してしまえば案外簡単なもの。 『俺大好物、ラーメン』 位なテンポとノリがあれば、こんなもの。 言われた当の本人にしてみれば、いきなり何だ?と思うかもしれないけれど…っつーか、 案の定… 「…は?」 口をポカンっとあけた侭、ベッドに寝そべった体勢を維持し、俺を呆けた眼で見ている。 あぁ、そりゃ分かるよ、分かる、分かる。 「だから、俺はお前の事が好きな訳。恋愛対象として」 だって、 「…俺、男…だよ…」 うん、知ってる、お前も男だもんな。 笹野悠士(ささのゆうし)、俺の男友達。 だから、一世一代の大決心。 男の俺が、男のお前に告白すると言うこの茶番劇。 はははは、吃驚しただろうが、こんチキショー。 中学からの友達で、彼女もいる自分に俺からの告白なんてサプライズ過ぎて動きも止まっただろうが。 こんチキショー。 … …… 俺の家、俺の部屋。 一番落ち着く場所に、一番好きな奴がコロリ寝転がっている。なんて素晴らしいシチュエーション、だと言うのに今日俺はそれを自ら打ち破ってしまった。 何でそんな事を? 答えは簡単。 「ま、気にするな。ただ好きっつー事言いたかっただけだから」 そう、取り合えずこの不毛な思いを断ち切る為です。 中学一年に知り合って、早4年。 いい加減目の前の壁を取り去りたかった訳です。 こんな男を好きな侭ずーっとムンムンしてるよりは思いを告げてスッキリしたかったんです。 大体男が好きな訳じゃない。たまたま。うん、目の前に居るコイツだから好きになっただけ。これって人間性を好きになったっつー話だよ。 なので、だ。 「これでこの話終わりな」 相変わらず呆けた侭の俺の友人…。 ま、いっか。 放ったコントローラーを取り上げ、またゲーム画面へと コイツへの感情はクリア。 次はこのゲームクリアしとこ。 そう、そんなもんだ。 不毛な先の見え無い事には自分でけじめつけないとな。 明日からはまた普通、そう、もっと普通な日々を。 「あ、」 チュドーン 画面の俺の分身が消えた…。 ふわぁ… 欠伸を噛み殺し、爽やかな朝の登校。 昨日…告白…と言うヤツも終え、スッキリぃ★ かと、思ったのだけど…。 何だ、コレ。 何か違う。 軽くなったと思った俺の心だけど、何か違う。 どうも現実感が無いと言うか、重みが無さ過ぎると言うか…。 「…俺…間違ってたかな?」 つか、昨日の夢じゃないよな? そんな事をぼんやりと思っていたら、ポンっと背中に衝撃。 「はよっ」 「おう」 悠士がニコっと笑顔付きで隣に並ぶ。 いつも大体この時間に会う悠士は一緒に登校、そして勿論それは今日もだ。 いつも通り過ぎるこの日常に俺はやっぱり首を傾げる。 気にするな、とは言ったけど… やっぱり夢だった…とか、いや…まさかなぁー… 「なぁ、冬也(とうや)…」 不意に呼ばれた名前に悠士に顔を向けると、ニコニコと笑みを返される。 「な、冬也は何で俺の事好きになったの?」 「……」 夢じゃなかったようで。 ボリ…っと頭を掻きつつ、その事実に多少安堵した。 「…あの話はあの時で終わりって言わなかったっけか?」 内心ホッとしつつも、そう切り捨ててやれば、悠士はむぅっと眉間に皺を寄せる。面白く無いとかつまらないだとかによく見せる表情。 「何で?やっぱり、気になるしさぁ」 「うーん…」 確かに告白しっぱなしと言うのは俺はスッキリしても相手はそんなモンじゃないのかもしれない。 腕組みしつつ、取り合えず差し支えの無い言葉を。
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