21人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
男性は、あなたを真っ直ぐ見つめて口を開きます。
彼の口から出たのは、今まで話していた異国語ではなく、あなたの母国語でした。
「手乗りシャチが巨大化・凶暴化する確率は87パーセントです。また、手乗りシャチが海に捨てられ自然繁殖し、ニンゲンを捕食し始める確率は65パーセント。このデータを彼らが信じる確率は、3.9パーセントです」
あなたが驚いたのは言うまでもありませんが、唐突な外国語に、屋台のおっちゃんも驚いていました。
「ん? 何て言ったんだい?」
「いえ。可愛いですね、手乗りシャチ」
男性はテレビを指し、涼しい顔で話します。
それを聞いた屋台のおっちゃんは、大きく頷きながら男性の肩を叩きました。
「そうだろ、そうだろ! おかげで観光客が増えて、仕事も増えたんだよ。ウチらにとっては、地元が活気に溢れてありがたい限りでね。オルキヌス様様だよ。はっはっはー!」
あなたは気分が悪くなり、グラスを地面に置いて立ち上がりました。歩き出そうとしましたが、屋台のおっちゃんに腕を掴まれてしまいます。
「どこに行くんだ? ほら、あんたも買ってったらどうだい? 見るだけでもさ……手乗りシャチ、可愛いだろ?」
最初のコメントを投稿しよう!