異国の潮風

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異国の潮風

あなたは今、遠い遠い異国の島に来ています。 ここは南国。 照りつける太陽ときらめく海が見えています。 あなたが足を運んだのは、小さな小さな田舎の港町。 あなたには、目的地がありません。 海沿いの遊歩道を人の流れに従って進んでいくと、活気のある通りに出ました。 パンフレットによると、ここは観光客向けに新しく開発された場所で、お店がズラリと並んでおり、いわゆる商店街のような作りになっています。 通りの入口で、観光客らしき男性が屋台のおっちゃんに絡まれています。 あなたは、彼らの声がギリギリ聞こえる木陰のベンチに腰掛け、汗を拭き拭き、足を休めることにしました。 「へえ! あんた、ウチらの言葉がやけに流暢じゃねえか。ホントに初めてかい?」 「ありがとうございます。語学は得意なんですよ」 「そうかい、頭がいいんだね。羨ましいよ」 ――りんごんりんごーん。 商店街の奥から、鐘の音が響いてきました。 「お、もう昼か。ちょうどいい! 今からテレビで『手乗りシャチ特集』が始まるよ! 果物でも食べながら見ていきなよ! ほら、座った座った!」
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