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「お待ちしておりました。どうぞ、こちらにお掛けください」
ソファーに座るよう促すと、タツミは会釈を返して静かに腰を下ろした。
「本日はお越しいただきありがとうございます。私、月島と申します」
自己紹介と共に、名刺を差し出す。
タツミは会釈しながらそれを受け取り、眉尻を下げた。
「どうも。あの、俺……本当に分からないことばっかりで」
「お気になさらないでください。何か質問がございましたら、細かいことでも、ご遠慮なくお尋ねくださいませ」
「……はい」
タツミはかなり緊張している様子だ。堅苦しい空気が苦手なのかも知れない。
「ところでタツミさんの名字って、漢字ではどう書くんでしょう。こちら相談シートになりますので、ご記入頂いてもよろしいですか? 分からないところは、空白で大丈夫です」
極力リラックスさせようと、月島は少しだけ口調を崩し、柔らかな笑顔を作って相談記録用の紙を渡した。
つられるように、タツミもうっすらと笑みを浮かべてそれを受け取る。しかし、それが精巧に作られた愛想笑いだということはすぐに解った。
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