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門前払いされそうな王様
ジョナサンはイライラしながらフロントに食い下がっていた。
世界でも最高クラスの超高級ホテル、フォックスグランドホテルにジョナサンは半泣きでいた。
「お願いだから泊めて!ゴーマの奴とトキさんは仲のいい友達なんだって俺!パスポートも持ってるよ!アースツー行ったことある?!俺王様なんだけど!お忍びで馬鹿を追ってアースワンに来たの!」
フロント係は混乱を飲み込んで、努めて機械的に言った。
「それだけでは、お泊めする訳には参りません。エルネスト様」
「わざとらしくパスポート見ながら言うなって!俺テレビ出てたでしょ?!アメリカ大統領と握手してただろ?!トキさん呼んで!タンザニアにいるから!て言うかタンザニアってどこ?!」
ジョナサンは混乱していた。
「申し訳ございませんお客様。お部屋は満室でございます。どうかお引き取りを」
「異世界の!学園国家アカデミーの王様が!泊まりに来てんの!お願いだから泊ーめーてーよおおおおお!」
こんな切ない王がいるのか。という話だった。
こうなったら腰の9ミリ抜くか。そう思っていると、嗅いだことのある匂いが近づいてきた。
「君。部屋を一つ頼みたい」
「トキさんか?!」
言われた男の人は怪訝な顔をした。
「いえ。人違いですが」
言った人はジョナサンと同い年っぽかった。
「トキさんの匂いがするもん!泊めてくれ!俺、ジョナサン・エルネストって言います!」
「パスポートを拝見します」
「畜生またかよ!誰か俺知ってないの?!有名人だろうが!オリハルコン輸出しないぞ終いに!」
「いえ。知っておりますよ。アースツーでは国王になられたと。義母と勘解由小路氏とはお知り合いなのですね?」
「そう!そうなんだ!助けてください!助けてくださああああい!」
誰か死にかけてるのか。って言う感じだった。
何かフラさんが見てた。映画。
「君。部屋を一つ。どうせあの男の部屋は常に空いているんだろう?」
「はい。しかしながら、宗春様はお泊まりになれませんし、お部屋は全て満室でして」
「この稲荷山宗春が泊まれない部屋があるだと?!私は前総帥だぞ!ああ解ったもういい!私の部屋へ通せ!どうせ隅の角部屋だろう!」
「はい。レギュラーのシングルルームですね」
「殊更にレギュラーを強調するなあああああ!エルネスト様!こんな扱いをされる前総帥の部屋でよければどうぞ!」
物凄い残念な元総帥がいたという。
「ありがとう!ありがとうね!えっと、ヌエハル君!」
「うがああああああああああああ!!」
ジョナサンは同じような残念な人間と知己を得ることに成功していた。
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