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逃走のカンチク
ドンゴロス山を降り、ついで計1200キロの大遠泳大会が始まろうとしていた。
ちなみに100キロ先の海域には、体長50メートルクラスの獰猛な魚竜の勢力圏にぶち当たる。
ああ?銀龍に比べれば軽い軽い。素早く泳げ。泳ぐ時のコツを教えてやる。手で漕ごうとするな。心を漕げ。さっさと帰ってアリエールの城に行くんだ。ロージーにロズウェル、アリエールまだおっぱい出るのかな?フフフ。
とかスケベな馬鹿は言っていた。
浜辺に降り立ち、ブリュンヒルデは剣呑極まりない死の海を見つめていた。
きゅっとしまったウエストから出っ張る大きな尻、ウエストから背中のライン、まだ完全にコミットしていないが、
ブリュンヒルデのボディーに革命が起きていた。
「ホントに凄え。高さ10キロの断崖登っただけで痩せるんすね。体長20メートルのハオウグマも一頭消えましたが」
恐ろしい勢いでクマは食われていった。
「私の見た目が変わったなどどうでもいい。私のエロには一切のブレもない。我がエロはこの肉体に支えられている。おいバーニー」
「何でしょう?先生」
「私を逃がせ。私を騙してこんなところに連れてきたヤクザ紛いのクソ勇者は今愛人と電話中だ。チャンスは今しかない」
「飛行挺は一隻しかありませんよ。王陛下が常に上空からライフルで狙ってます。逃げたらマジで撃たれるっすよ」
「生徒を本気で撃とうとしたゴミ勇者死ねええええええええええええええええ!バーニー!お前旧院にいたな?!院の魔法学科に!マキシマス・フレイアやアーサー・メルクリウスの後輩だったろう?!」
「ええ。まあ一応は」
「だったら簡単だああああああああああああああ!さっさと逃がせお前はああああああああああああああ!!」
「転移魔法は使えますけど、魔法封じの手錠が」
「スティンガーあああああああああああああ!」
「うお!凄え外れた!」
「さっさと転移しろおおおおおおおお!あばあああああああん?!」
銃弾が鼻先を掠めた。
「あとたった1700キロ泳げば中央大陸だぞ。中央大陸からアカデミーまで歩いて1200キロだ。お前ならやれる。自分を信じて進め。足はもげたりしない。回復魔法があるじゃないか。人間はな?心臓が動いてりゃあ何とかなるもんだ。根性で泳げ。逃げたら撃つ」
「殺すっつっといて何だあああああああああああああ!もう駄目だ!通常の人類が約2000キロ泳げるかあああああああああ!自分がたまたま上手くいったからってそれを押し付けるな!」
「ブリュンヒルデ。自分を信じろ」
「信じとるわああああああああああああああ!やったら死ぬと!ああああああああああああああ!デッドラインが近づいている!」
「お前は死なない。俺が責任をもって助ける。お前は死のラインの上で苦しみ続けるんだ。でも見ろ。それもいずれ終わる。終わったらどうなるか。お前も俺のようにモテモテだ。フラさんなんかもう、五人目が欲しくて常にうなじからいい匂いがしてる」
「全員が全員お前みたいになるかあああああああボケがああああああああああああああ!フリーダム・フォー・ミー!私を助けろバーニいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「バーニーは既にお前を助けているだろう。人間は変われるんだ。お前、もうこんなに痩せたじゃないか。もう少しだブリュンヒルデ!オープン・マインド!ポジティブ・ソウル!一緒に頑張ろう」
「お前はアメリカの暑苦しい宣教師かあああああああああああああああああああ!!駄目だこのポジティブモンスター!バーニー!お前、私が本当に好きか?!」
「ちょっと脱Bしちゃってるけど、即ハボです」
「脱Bでその先に行かんとはな。ヒョウハチ、タメマツ、エボシチ。確保だ。上空から海に捨てりゃあ泳ぐしかない。大丈夫だ。もげそうなのは気持ちだ。腕はもげたりしない。魚竜に食われたって、心臓が無事なら生きてるし。手足がなくなっても誰かがいる。その誰かを探せ」
「ちょっとはへこたれろおおおおお貴様ああああああああああああああ!バーニー!バーナード!助けてくれたら吸わせてやる。我がカンチクを」
「う、うう、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!素晴らしき陥没の世界!」
突如ブリュンヒルデの背後に回ったバーニーは、ブリュンヒルデのおっぱいを握りしめて抱き寄せた。
「おお?!転移魔法か?!」
「ポジティブ結構ですが、ちょっとやりすぎですよ陛下」
「行くぞバーニー!目指すは新世界だ!自由の大地ふぉおおおおおおおおーおーお
おおーおおおおおおおおおお!」
何か、けったいなメロディーを口にしていたこの馬鹿は。
「ええ。じゃあ、初めてのアースワン出産しますんでよろしくー。オタク夫婦の行く末に期待希望。バイビー」
バーニーは姿を消した。
縮地で追った少年組と、ジョナサンの撃った9パラ弾が額をぶち抜く直前の出来事だった。
「あー!逃がしたか!でもまあ、どうせ捕まるんだ。行こう。レッツポジティブ !」
「レッツポジティブ!レッツポジティブ!」
バイト代で懐柔した東の少年組のコールが響く中、ジョナサンはかつての生徒を追って動き出した。
アカデミー建国前、ジョナサンの追跡からは誰も逃れられないという表現があったが、世界が開けた今、ジョナサンの能力がどこまで通用するのかは、全くの未知数だった。
これから、ブリュンヒルデ・レトナシワと、ジョナサン・エルネストのルール無用の壮絶な追いかけっこが始まる。
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